get&gift | ナノ






主♂N
*EDから2年後設定










冬真っ盛りのセッカシティの奥、リュウセイランの塔が見えるこの街にブラックはおりたった


手早くポケモンを戻しジムに走る
勿論目的はジム戦ではないがジムリーダーの元に急いだ


「こんにちはハチクさん!」


部屋の奥、ひっそりとした場所で目を閉じ瞑想していたハチクは静かに

「ブラック、また塔に行く許可をもらいに来たのか」

「ええ、やっとリーグの仕事が一段落したので」


その後二、三言話してからジムを出て街の奥に進む


向かう先は、リュウセイランの塔


ブラックは2年前からリーグチャンピオンとして働いている
最初こそ戸惑うこともあったがある目的のために頑張っている


(そろそろ、僕も大人になったから)


そう考えながら塔の階段を上る
2年前に崩壊がひどかった塔も修復が進んで野生のオーベム達も
むやみに襲ってこなくなった


(このうえでもう一度誓いを立てよう)



―Nを見つけ出すという誓いを―



あの時引き留めることができなかった手を今度は掴みたい

その一心で過ごしてきたのだから


出会いという始まりはここではないけど、本当の始まりはここだとブラックはどこかで確信していた
だからこそ誓いを立てるべき場所にここを選んだ


階段の終わりが見えてくる
数か月ぶりの感覚はやっぱりどこか落ち着かない

この塔はどこか人を拒絶している気がするから感じるこの緊張感
この先には誰もいないはずなのにまるで強者がいるような感覚

ブラックは何度ここを訪れてもその感覚に慣れることはなかった


階段は終わりを告げ窓から差し込む光に目を伏せていると、先客がいることに気付いた



逆光で見えにくいが振り返りこちらを見るその姿は―


「ブラック!?」

「N・・・・?Nなのか?」


あの日よりもまた少し髪が伸びた緑の青年、Nだった


ブラックは突然の事に立ちすくみそうになる足に力を入れぐっと歩き出す
ゆっくりと、しかし逃がさないといった様子でNに近づく


どうやらこの展開を予想していなかったのはNも同じだったらしく
あたふたとあちこちに視線を向けて困惑の色を見せている


その姿はNがあの日から心が成長したことを感じるには十分で



目の前まで来たブラックは堪らなくNを抱きしめた
2年前はブラックのほうが小さかった身長は今ではブラックのほうが少し高い、すっぽりとNはブラックにおさまる


「ブラック!!な、なにを」
「今までどこにいたの」

抱きしめられたことで困惑を戸惑いに変えたNに構わずに質問する

Nはブラックの体がかすかにふるえているのを感じてポツリポツリ話しだした




ボクはあの日どこか遠くへ、誰もボクを知らない場所に行こうと思った。
それが逃げることなのは分かっていたがボクにはそれしか思いつかなかった・・・
行きついた先でボクはただひたすらにトレーナーとは何か、ボクとは何か、力とは、正義とは何か考え続けた。
結局考え付いた先は上辺だけの考えのように感じた、だから今度は人と関わろうとした
でも、まだ恐怖する自分がいてまた同じことを繰り返すような気がして
何か思いが変わるキッカケがほしくてまた帰ってきたんだ


Nはキッカケを掴む前に見つかったけど、と最後に小さく呟いた
ブラックは抱きしめる力を緩め、Nと目を合わせる

「これから、どうするの」

チャンピオンという肩書きを持つ身なのだからNは敵なんだろう
それを理解しているNははぐらかす様に苦笑し続ける


「僕はNを警察やリーグに差し出す気はない」

よほど意外だったのだろうNの目が見開かれる
それに構わずブラックは言葉を紡ぐ


「僕はNとずっと一緒にいたい、いれないなんて言わせない。」

好きだ、囁くように放たれた言葉を聞いたNは顔を赤くして口を開閉させる
ブラックは何も言わずにNを見つめる


「ボクは、ここに・・いてもいいのだろうか・・・・?」


沈黙を破ったNの声は震えている
心では縋りたいと叫ぶ。しかし理性は縋りたくても縋れないような存在なのだから離れろと叫ぶ


その暗い思考を打ち消す様なため息がブラックから漏れ

「またマイナス思考に考えてる、いいんだよここにいて
聞くよ?一緒に来てくれる?」


抱擁を解いて少し離れてから意志の強い目でNをみる


その目を見た瞬間にあぁ縋っていいのか、とNは思った。
心と理性の矛盾は不思議で特別な感情が消し去っていく
これは恋と呼んでいい感情なのだろうか


「そうだね、一緒に行くよ。この不思議な感情の意味はブラックが知っていると思うから」

そうしてゆっくり手を差し出す
意志のある答えとその手にブラックは満足した笑みを浮かべ

「Nの知らない世界や感情を見せて、聞かせて、感じさせてあげるよ」


優しくその手をとり、塔を降りようと手を引いた



ファースト・ワンダー
初めての不思議から、次々と溢れる不思議を
君に教えてあげる

この世界にようこそ、僕の愛しい人

二度と離さないから



fin.



N受けwebアンソロ企画様提出作品



20101111 那月







人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -