イッシュ
きっかけは昨日ベルがライブキャスターで僕達に相談があるからライモンシティに来てほしいと伝えたことだったと思う。
夢、希望、世界
ライモンシティのポケモンセンターの中でチェレンとホワイトはソファーに座り来ていない二人を待っていた。
「まったく、ベルは変わらないな・・・」
「それがベルだから私はいいんだけど、ブラックは」
「僕がどうかした?」
後ろからいきなり降ってきた声にホワイトはぎょっとしながら振り向く。そこにはブラックが笑顔で立っていた。
「や、チェレン。ついでにホワイト」
その登場にチェレンはいつもの事と軽く流すがホワイトはいつもと変わらずブラックにつっかかる。
「ついでって何!?」
「呼んだのはベル、少しバトルがしたいなって思ったのはチェレン
ならホワイトはついでになる」
しれっとした態度のブラックにワナワナと震え今にもエンブオーでも取り出す勢いのホワイトだったが第三者の声に我に返った。
「おぅい!3人とも揃ってるね〜」
声とパタパタと走ってきたベルを見てホワイトは完全に力が抜けたようで肩を落とす。その姿を見てベルは何かあったのかと心配するがそのやり取りが数回続いたところで見かねたチェレンが間に入る。
「ベル、相談ってなんだい」
「チェレンったら真面目なんだから・・・それより3人ともついてきてよ!」
ベルは質問を無視してポケモンセンターの外に出ていく。ホワイトはあっという間に去って行ったベルに立ちあがりながら名前を呼ぶ。
「あ、ベル!!・・・・・まったく追うわよ?」
そう言うとホワイトは小走りでポケモンセンターの外に出てベルの姿を捜す。それに続いてチェレンとブラックも外に出て、遠くに見える金髪の幼馴染の後を追う。
「皆来たね〜!」
「ベル、ここって・・・」
ベルが案内したのはライモンシティの名物の一つポケモンミュージカルだった。ここにきてすることと言えばひとつなのだがブラックは一応といった風にベルに聞く。
「なんでミュージカル?」
ベルは少し困ったように苦笑しながらも答える。
「私まだやりたいこと見つかってないでしょ?
だから何かヒントになるかな〜ってミュージカルをやってみたの
そしたらすっごく面白くてね!!皆にもこの感動みたいな感情を感じてほしいなって思ったの」
ほわっとした笑顔を浮かべるベルに三人は顔を見合わせた後それぞれ言葉を述べる。
「私は別にいいよ元々興味あったし」
「まぁポケモンもバトルばっかじゃ駄目だろうからね……いいよ」
「いいんじゃない?」
その了解の返事を聞いたベルは先ほどよりも嬉しそうに顔をほころばせた。
「ありがとう皆!!よしじゃあさっそくエントリーしに行こっ」
ミュージカルの受付に4人エントリーを告げると今は森のお散歩のステージが空いているらしくさっそく控室で各自ポケモンのドレスアップを始めた。
そして本番、ホワイトたちは出演者用の座席に座って自分のポケモンを見守る。独特の緊迫感にベルとホワイトは耐えきれなくなったのか息を吐き出し言葉を掛け合う。
「う〜緊張するっ」
「た、確かに・・・盛り上がんなかったらどうしよ」
背筋をまっすぐにしてステージを見つめる二人をブラックとチェレンはそれを横目で眺める。
「失敗も盛り上がる要因だし?別に平気だろ」
「まあボクのポケモンに限って失敗なんてないだろうからね」
そういいステージに目を向けると開始のブザーが鳴り響いた。
「アハハハハハッ!あーおかしー」
ミュージカルの外のベンチでブラックは腹を抱えて笑っている。それを見て顔を赤くしながら怒鳴るホワイト。
「なによ!私のドレディアは失敗してないんだからいいじゃない!!」
「いやだって、ねえチェレン」
いきなり話を振るとチェレンはやれやれと嘆息し眼鏡をかけなおす。
「まぁまさかホワイトが派手にコケるとは思わなかったけどさ控えならまだしもエントランスで……」
その時の様子を思い出す様に視線を明後日の方向に向けたチェレン。その姿にホワイトは自分が起こした失態をまざまざと思い出し「忘れろ!バカ!」と怒鳴る。
「落ち着いてホワイト、私もよくコケかけるし・・・」
「ベル〜あんただけよ私の味方は〜」
フォローしてきたベルに抱きつくホワイトをよしよしとベルが慣れたように背中をたたく。
「でも楽しかったよね、ポケモン皆かわいかったし!」
片手でホワイトの背中をなでながらベルが1枚の写真を取り出す。そこには今日のミュージカルのワンシーンが写っていた。
その写真をのぞき込んでチェレンもうなずく。
「レパルダスもリフレッシュできたみたいだし」
「僕のシャンデラなんてリボンはずそうとしないんだけど」
ブラックは呆れたようにボールからシャンデラを出す。出てきたシャンデラは頭に青いリボンをつけてとてもうれしそうに飛びまわっている。
「またミュージカルやろうよ!!今度は準備バッチリで!」
ベルの提案に全員頷いてまたやろうと口々に約束した。
fin.
10000打記念小説
20101021完成→20110210修正