シンオウ
ポケモンリーグの一角のとある部屋を忙しなく出入りする影。そこからはとてもいい匂いが流れてきている。
部屋の中にいるのはダイヤとゲンだった。
「ゲンさん、料理で卵使う予定あります?」
「卵はないよその代わり生クリームは少し残してほしいかな」
「分かりました」とダイヤは踵返し、常温に戻してある卵を数個の大きなボウルに分けて入れる。
二人がなぜ料理をしているかというとシンオウの知り合いが珍しく全員がそろう機会ができたからで、ダイヤの幼馴染パールもカントー修行から帰ってきているという運の良さ。
ダイヤはこの機会を逃さないように全員に連絡をまわし、ゲンに一緒に料理をしてほしいと頼んで今に至る。
集まる人数が多いということは必然的に料理の量が多くなるのでゲンが料理、ダイヤがデザートという役割分担になった。
ゲンはパスタの具財を炒めながら残りのサラダのレシピを思案する。料理はバイキング方式の予定なので、数種類あったほうがいいと思い手頃なシーザーサラダ、海藻サラダ、グリーンサラダの三品を頭の中でピックアップする。
炒め終わった具材の上にパスタを戻しあえ、大皿に飾りつける。
その最中に部屋にピーという音が響いた。その音を聞いたダイヤはボウルでケーキの生地をさっくり混ぜ合わせながら余熱が完了したオーブンの具合を覗き込む。
ゲンはそんなダイヤから手元に視線を戻し野菜を洗い、サラダに取り掛かる。
ダイヤはオーブンから作業台に戻り混ぜ終えた生地を型に流し込んでいく。ダイヤは食わず嫌いの激しい幼馴染やチョコを食べない四天王の一人を考慮しフルーツシフォン、ガトーショコラ、ショートケーキを二ホールずつ作ることにしている。
足りなくなった分はクッキーで埋め合わせるなので、冷蔵庫には寝かせたクッキー生地が焼かれるのを待っている。
流し込んだケーキ生地の表面を慣らしてからオーブンにいれ時間をセットする。
二人の手早い作業でそれから一時間後にはデザートの飾り付けや切り分け、料理の配置も終了し招待した人を待つだけとなった。
「ふう、ゲンさんお疲れ様です」
「ダイヤちゃんこそ大丈夫かい?」
「そこはお母さんに鍛えられてますから!」
そういって笑っていると扉が開きシロナと四天王が入ってくる。ダイヤとゲンの談笑姿を見て少し申し訳なさそうに眉をひそめる。
「あら、少し遅かったかしら?」
「準備手伝うつもりだったのにごめんね」というシロナにダイヤはぶんぶんと首を振って大丈夫だと返す。リョウは並べられた料理の前に立ち目を輝かせながら振り返りゲンに尋ねる。
「ねぇ、まだ食べちゃだめなの?ボク結構ハラペコなんだけど」
「リョウ君まだ皆さん全員が揃っていませんよ、オーバも行儀が悪いです」
すでに料理に手をかけようとしていたオーバがゴヨウに本でたたかれ、イテッと短く声をあげ手をひっこめる。
「オーバざまあ」
その声に振り向くとデンジを先頭にジムリーダーがぞろぞろと中に入ってくる。
ムッとしたオーバは「今まで真剣勝負をしてた!」と返すと「お前よりも俺のほうがバトルしてるわ!」と逆切れしたデンジに殴られる。その様子をみて焦ったり呆れたり、楽しんだりといった様々な反応がおこる。
その中でダイヤはキョロキョロと辺りを見渡してから首をかしげる。
「あれ、パール来てない」
いつもの彼なら料理を並べる前にでも来て罰金と叫ぶに違いないのにおかしい。
「ナタネさん、パールとプラチナ君見ましたか?」
近くにいたナタネに行方を聞いてみるが返事は見てないだった。
「もしかして忘れてたとか?せっかちすぎて待ちくたびれたのかな……?」
ぶつぶつとあり得そうなことを呟くと、だんだん心配になってきて部屋から出ようとしたとき、バタバタと今までの足音より一際大きな足音が鳴り響く。
「すいません!バトルしてたら遅れました!!ほらパールも謝って!」
「なんだってんだよ―!!暇つぶしにバトルしようっつったのはそっちだろ!」
開きっぱなしだった扉から行き切らしたプラチナとパールが入ってくる。息も整えないまままた言い合いを始めた二人にダイヤは落ち着くように促してから言葉をかける。
「二人とも!!待たせてるんだから早く早く!!」
ダイヤはジュースの入ったグラスを二人に手渡し部屋の中央に押していく。
遅れた事への罪悪感からか、おとなしい二人にクスクスと笑いが漏れるが全員グラスを持ち三人を見守る。
「さて」
せき払いをして全員の意識を集めてからからシロナが切り出す。
「今日は久々に全員集まったんだから楽しみましょう
それでは」
シロナがグラスを掲げると皆も次々とグラスを掲げる。
「「「「カンパーイ!!」」」」
祝杯、談話、そして
Thank you 10000hit over!!
fin.
10000打記念小説
20101021完成→20110210修正