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今まで旅をしていて、サトシは色んな大人に出逢ってきた。トレーナーだったり、悪人だったり。
ゲンはその中でも好印象であり、不思議な存在だった。
何もかも判っているような、悟っているような雰囲気が漂っている、そんな気がするのだ。誰よりも大人に見えるからだろうか。若く見えるのだが。
きっと纏う雰囲気がそんな風に見せているのだろう。


「ゲンさんて不思議ですね」


気付いたらサトシは声に出していた。唐突な言葉に、言われた本人は首を傾げる。どこか幼い動作だった。


「あ、えっとなんていうか。ゲンさんはすごく大人だし、言ってることも正しいって分かるんです。それに…」


それに、ポケモンをとても愛している。

ポケモンだけではない。ゲンは「生命」そのものを愛しているように思える。
何に対しても慈しむ心を持っている彼は、サトシにとっては新鮮なのだ。

途中からなにを言えば良いのか判らず、サトシは両手と視線を彷徨わせて、あうあうと困ったような顔になる。
見計らったようにゲンとルカリオは立ち上がった。


「え?ゲンさん?」
「そろそろポケモンセンターに戻った方がいい。タケシ君やヒカリちゃんが心配するよ」
「あ、は、はい」


伝票を持って、微笑むゲンに、サトシはピカチュウを肩に乗せて立ち上がった。







ポケモンセンターに戻る道中、ゲンは色んな話をした。
どれもサトシを飽きさせるものでなく、話の展開が面白くてキラキラと目を輝かせて、時に頷き、時に意見を言ってはゲンとルカリオを微笑ませた。


「見えたよ、サトシ君」
「あ!ほんとだ、ポケモンセンター!」


よかったー、とサトシは心底安堵した。
しかしもう時間は三時を回っているし、タケシ達もポケモンセンターの中でヤキモキ(と言うか心配)していることだろう。


「本当に今日はありがとうございました、ゲンさん!いっぱい話もできて、楽しかったです」
「ピッカ、ピッカチュウ!」
「うん。私も楽しかったよ。タケシ君達に宜しく言っておいてね」
「はい」


それじゃあ、と真っ直ぐポケモンセンターに向かおうとするサトシを、ゲンは引き止めた。


「サトシ君、ポケモンにも、人にも、君は優しくなれる。優しいのは弱さじゃない、とてもいいことだ。その優しい気持ちを忘れなければ、もっともっと強くなれるよ」


ああ、やっぱり、


「はいっ!!」


ゲンさんは、不思議な人だ。









「あっ!サトシいたー!」
「どこ行ってたんだ、探したんだぞ!」
「ごめんごめん。さっきまでゲンさんと一緒にいたんだ」
「ゲンさんと?…いいなあ、あたしも会いたかった」
「…サトシ?」
「ん?」


タケシが相変わらずの細い目を、こちらに向ける。正確には怪我をした両腕と頬だ。


「お前、腕の怪我結構痛がっていたのに、今は痛くないのか?」


言われて、サトシはそういえば痛くないような…、と思い、突然包帯を解き始める。


「あ…」


怪我一つない肌が、そこに見えた。














響くように彼の人の声が心に残り、腕には体温が残っている。

腕の怪我も頬の怪我も、ゲンと再会した時に彼が「その怪我はどうした」のかと訊ねた時に触れた。
そして、ここへ戻るときもはぐれないように手を繋いでいた。それだけ。

(なあピカチュウ。波導使いって魔法使いなのか?)
(ピカァ…)



end.

相互リクエスト「ゲンさんとサトシのほのぼの」
リクエスト者:那月由羅様


お待たせ致しました!リクにそっているかどうかは定かじゃありませんが…どうぞお受け取りください!



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素敵すぎる作品に顔がおかしなことになりかけました
ゲンさんが大人でかっこよくて目眩を覚えましたサトシもいい子・・・・!

相互ありがとうございました







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