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ゲンは協会の方より依頼され、この街に訪れていた。
以前よりコラッタやビッパがあちこち齧るので何とかして欲しいという苦情があり、普段の仕事を休んでここまでやって来た。
すぐに問題も解決し、折角なので観光してから帰ろうかと、ルカリオとお土産を物色していた時、


「あれ?」


大通りで小さな背中が困り果てたように見えた。
肩に乗ったピカチュウと見慣れた後姿にゲンは、


「サトシ君、どうしたの?」


歩み寄りながら微笑んだ。
すると、


「…ゲンさぁ〜ん!!」
「ピカッチュ〜!!」


殆どタックルするような形で両者に抱きつかれ、ルカリオと顔を合わせて目を瞬かせたのだった。







「…そっか、ポケモンセンターに戻れなくなったんだね」
「はい…」

元々素直な性格であるサトシだが、それなりにプライドもあって、さらりと、迷子です、なんて言えないと思っていたのだがゲンに、一体どうしたのかと問いかけられたらすぐに「迷子になっちゃいました」と言ってしまった。
それをからかいもせず笑いもせずにいるゲンは、やはり大人なのだと思った。これがシゲルやシンジだったらどうなっていたんだろうか。
シゲルならまだ少しからかわれるけど、「仕方ないなぁ」なんて言って笑いそうだ。たやすくそんな幼馴染の姿が想像出来てしまい、サトシは笑った。

が、シンジはどうだろう。
悪い奴ではないと思う。思うが、会えば憎まれ口で売り言葉に買い言葉が多い。こんなとこで出逢ったら嫌味をたっぷりと言われそうだと思い、気分が沈んだ。

百面相しているサトシを、ゲンの横にいたルカリオは不思議そうに眺めている。コロコロと変わる表情が面白いのか、口元は笑みが模られていた。

そのとき、



ぐぅぅぅうううううううううう。




「……………。」
「……………。」


盛大に、大通りのど真ん中で聞こえたのは何だったのか。
思わずゲンとサトシはその場に立ち止まりお互い顔を見合わせる。もう一回、また同じような音が鳴った。


「…………すいません、」


気まずい雰囲気になったと思ったのか、サトシが少し頬を赤くしながら言った。腹部を抑えてまた鳴る音を我慢しようと力を入れてみる。
…ほぼ無意味だった。


「そういえば…私達も昼食はまだだったな、ルカリオ」
『はい、そうですね』


隣にいるルカリオにそう問いかければ、微笑みながら頷くルカリオ。その会話をサトシとピカチュウは目を丸くしながら聞いていた。


「さっきね。丁度お昼にしようかなんて思っていたところだったんだ。一緒にどうかな」


改めて、ゲンさんは大人だ、と思った。













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