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ファイア・リーフ・アクア・ダイヤ



遠い夏の日の記憶。


暗い、狭い、怖い。そんな感情に包まれた子供達。山のふもとは起伏が激しいからなんてこと、幼い彼らは理解しないで歩きまわる。
炉端の花を見ていた少女を残して、深めの溝にすっぽりと俺とあいつはハマってしまった。必死に叫んで必死に帰ろうとした。

でも人もいないし、日は暮れかけてて‥‥。その上、あいつが足をひねったなんて、窮屈な溝の中、痛みに耐えながら二人で泣く少女の「大人を呼んでくる」。その言葉を信じて体を寄せ合って待ち続けた。










「ファイア?」

呼ぶ声は記憶の少女とは違う音。勢いよく顔をあげれば青蘭の瞳と目が合う。物思いにふけっていた俺を、旅のパートナーであるダイヤが現実に引き戻してくれたらしい。
今は、そう。ついさっきまで思い出してた二人が珍しく地方から出てくると言うから空港で到着を待っていたのだ。

「わり、そろそろか?」
「うんちゃんとリーフに3番ゲート前って伝えてるから迷わないと思うよ」

ダイヤは、俺がボーっとしてた理由を追及してこない。一応年下なのに、そういう気配りができるところは、きっと彼女の美点の一つなんだろう。
今まで会ってきた彼女の知り合いは皆そんな彼女を慕い、数年前の事情を知ってる者は心配していた。


「きた!」

そんなダイヤが声とともに走りだし、伸びた髪が揺れる。その視線を追えば、見覚えのある顔が2つ。それを確認した俺も、立ちあがり彼らに近づく。
ダイヤのとなりで足を止めれば、リーフとダイヤの間には、花が飛んでいるかのように笑い合っていた。

「久しぶりリーフ‥‥‥と、よぉアクア」
「こんにちはファイア、また背伸びた?アクアより高いんじゃない?」

リーフのその一言で、アクアが思い切り俺の頭を叩きつける。ドゴォッ!と空港には似合わない音が鳴り響く。


「いってぇ!!」
「へっ!これで縮んだな!俺を見下ろせ!!」

「ふざけんな!ってえ‥‥‥」

クリーンヒットしたらしいアクアの拳を睨みつけながら、頭をさする。心なしか目元に涙がたまってる気がする。

「ファイア大丈夫?」
「そいつに極刑を要求する程度には元気」


ダイヤとリーフに冗談交じり半分本気の言葉を口にすれば、二人は口元を押さえて笑う。こういうところが女の子らしくて、二人は良く似ている気がする。
全ての元凶であるアクアの拳から視線を外して、リーフに向き直り、これからの予定を尋ねる。

「で?何処行きたいか決まってんの?」

「うん!今日はね‥‥」

その様子はさっきまで思い出していた幼いときと、何一つ変わっていない。
ファイアは目を細めながら、リーフの口にする行きたい場所に耳を傾けた。









「リーフなら街のデパートとかふれあい広場とか、そういうとこ行きたいっていうと思ってたのに」

ダイヤは意外だなぁ。そういってくるくると回りながら進む。
俺達はリーフのリクエストで山を登ってる。別にカントーの山でもいい気がするが、基本的にカントーの山は、青々と茂った山よりも、鉱山と形容したほうが分かりやすい山が多い。

ようはピクニックがしたかったのか。

ダイヤ、リーフ、少し遅れて俺とアクアの順で緩やかな野道を踏みしめる。空も青いしポケモンたちもゆっくりと過ごしてる、雨の心配もないだろうし、絶好のピクニック日和だ。


「なあファイア、覚えてるか?」
「・・・・・」


アクアが俺に話しかけてきた事に、思わず目を見開いたが、なんとなく、アクアのさす出来事に心当たりがあって無言をつきとおす。

あの日。ポケモンがいなくても、なんでも出来ると思ってた頃の、自分がどれだけ非力でどれだけの人に支えられてるかを知った日。

むこうはそれを肯定ととらえたんだろう、短いため息をついた後、口を開く。


「あの頃と今じゃ変わったよなぁ」
「お前と俺との不仲とか、な」

アクアも俺も気付いてる。俺達の仲の悪さは、思春期の延長線上で。ただ、これ以上の変化を望んでないから二人とも嫌悪し合ってる。
たったそれだけでどこか俺は安心してる。ふと旅から帰った時、アクアが絡んできたら、変わってないとどこか安堵してる。
アクアもそれは同じだろう。俺が旅から帰ってきても、いつも通りアクアと喧嘩することに安堵してる。

リーフを含んだ俺達3人は、臆病な幼馴染だ。


「本当、ダイヤとかゴールドがまぶしく見える」

無意識に呟いた一言に、アクアも同意するそぶりを見せる。

「あの従姉弟は俺たち以上に色々体験してるからなぁ」


俺達案外経験不足かもな。

アクアの一言になるほど、と思った。確かにまだまだ俺達は発展途中なのかもしれない。

「お前たまには、いいこと言うな」
「おう、けどたまにはは余計だ!」

前を見れば、リーフとダイヤが手を振ってた。あそこが山頂か。



「先にあそこまで行った方が勝ちな!ドンッ!」

「はっ!負けるかよ!!」



未来はまだ変えられる
俺達もそろそろまた一歩踏み出そうか



fin.



...







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