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ゲン+ダイヤ


シンオウ地方でも、ゆったりとした時間が流れていると言われるはずれの小さな町。
ゲンとダイヤは町の中心に位置する喫茶店のウッドデッキで一服していた。勿論、手には厚めの書類を持っている。


この町はジムもなくコンテスト開催地に指定されているわけでもない、とても穏やかな町だ。
そんな町に二人が足を踏み入れたのは、理由がある。

「聞いたこともない組織を調査っていうのもどうなんだろうね?」
「どんな動きをしたかは知らないですけど、ギンガ団よりも巨大化するとは思えませんよね」


最近、小さな町を狙って騒ぎを起こしだした組織がある。
ここシンオウでは3年ほど前にギンガ団が活動していた。しかし解体され今では国際警察の監視の元、エネルギー研究に打ちこんでいる。

そのニュースは全世界に報じられ、シンオウは“地方で一番安全な場所”と言われるまでに評判が上がり、これまでに怪しい組織は影も形も見せなかったのだ。
そんな頃から3年、ついに現れた小さな組織。リーグは出た杭を打つようにゲンとダイヤに調査、危険性があれば解体を命じてきたのだ。


しかしゲンやダイヤの意見はそれに意味はあるのかということだ。

「上もこの前のプラズマ団のせいでピリピリしてるから仕方ないかな」
「まさかリーグの下に本部あるとか誰も思いませんよね‥‥‥」

数ヶ月前におきた遥か海の向こう、イッシュ地方でのプラズマ団の行動。
イッシュリーグを取り囲むように現れたアジトに、誰もが驚愕したのは今でも思い出せる出来事。

そのことで水面下で組織は巨大化するという事実を突き付けられた上の人間は、小さな組織にゲンとダイヤを派遣したのだ。


「上の人、私がチャンピオンだって絶対忘れてますよね」
「仕方ないんじゃないかな、ダイヤちゃんはどちらかというとコッチの仕事ばかりしてるから」

「そうですけど‥‥」


ダイヤの少しばつの悪そうに視線をそむける姿に、まだ子供だなとゲンは思う。
彼女は確かに誰よりも強く、向上心も学習能力もある。しかしまだまだ子供でこんなことに足を突っ込んでいい歳ではない。

「いいんです、私はやりたいことまだ分からないし、何かしてた方がいいから」


ゲンの思考を読みとったようにダイヤは口を開き、手元にあったミルクティーを飲み干す。
その様子にゲンは口元を和らげて立ちあがる。

「じゃあ行こうか」
「はい」

リーグから支給されたカードで支払いを済ませ、二人は町の奥に歩みを進める。


日が沈みかけるころ、二人は足を止め、辺りを気にしだす。
草の奥から感じる気配の数をカウントする。

4人。


口に出してお互い確認もしなかったが、一気にボールを取り出しポケモンをくり出す。

「ルカリオ波動弾!」
「ムウマージ上から相手の動きを見てきて!」

ルカリオの波動弾が林の中にすいこまれ、うめき声が木霊する。あれをダイレクトに喰らったら3日は寝込むだろう、とダイヤは顔も知らない相手に心の中で合掌する。

上空にいたムウマージが低い鳴き声を上げている、敵を見つけたらしく、今にも攻撃をしそうなほど睨んでいる。
ゲンとダイヤ、そしてルカリオは相互に頷き、林の中を走る。ルカリオが波動で辺りを探りながら先導しそれに続く。


辺りが闇に包まれたころ、炭鉱の入り口の前に立つ二人と二匹の前には十人以上の人間とポケモンが待ち構えていた。


「リーグからあなた方を調査するよう言われたのだが」
「どう考えても不穏因子ですねっ」

ダイヤが言葉を言い終わるか終らないかの時に降ってきた火の玉に飛びのく。


「ダイヤちゃん!」
「平気です!ゲンさん、私に任せてください!ムウマージシャドーボール!」

暗闇の中ダイヤはムウマージに指示を出す。
闇にまぎれ幾つものシャドーボールが相手を襲う。が、相手もそれをかわし一斉に攻撃を仕掛けてくる。


「遅いよ

ムウマージフラッシュ、ヤミラミ、シャドークロー」

ムウマージからまばゆい光が放たれ相手の後ろに出来た濃い影からヤミラミが飛び出し次々と相手を倒していく。
それは一瞬の出来事で、ゲンは舌を巻く。

彼女と同じ仕事をすることは少ないがまた成長している。そうゲンは思った。


「ゲンさん、私やりたいことないって言いましたけど‥‥‥あれ、ウソです」

不意にダイヤは口を開く、ダイヤに襲いかかろうとした人もポケモンもすでに伸びている。
後で警察に届けておこうと思いつつ、ダイヤの言葉に耳を傾ける。

「私は今のこのリーグからの仕事がいいんです、ここでなら間違えたりしないから、無関係な人が被害にあいにくくなったり出来るなら私はそれでいい

子供だからって今は甘えようとか思えないんです」


闇になれたゲンの目にはダイヤが見せたとても大人びた笑みが映る。
あの時ダイヤは知ってしまった、悪が何をもたらすかを‥‥


「そうか君が決めたなら、私にそれに口うるさくする権利はないよ」
「ありがとうございます、やっぱりゲンさんは大人ですよね」


うらやましそうな声を出す少女は舞い降りてくる仲間を優しく受け入れる。


「本当は君みたいな子にはもっと無邪気でいてほしんだけどね」

ムウマージと肩に乗ったヤミラミと戯れるダイヤを見て呟けばそばにいたルカリオも頷く。
ルカリオも鋼鉄島にはじめて来た頃の、あの純粋に高みを目指すダイヤが好きなんだろう、勿論今のダイヤも好きなのだろうが。


「子供ということが私の枷になるなら私はその枷を利用しますから、シロナさんとかには黙っててくださいね」

ダイヤは二匹をボールに戻した後、指を口元に持ってきて子供らしい笑みを作る。
ゲンとルカリオは顔を見合わせてから、笑って承諾する。

「まだまだ子供だね」

二面性を持つダイヤ、けれどそれが彼女らしいとゲンは思った。



カケラ集め
一つ一つ集めて行けばいつかは消える



fin.



20110423







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テーマ「人外ファンタジー」
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