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主♂N前提N+ダイヤ



プレゼントを贈りたいとNはダイヤの別荘を訪ねてきたのは数時間前。
ダイヤはもし自分がシンオウにいなければどうする気だったかは気になるが聞けないでいた。

シンオウという北国のさらに北方に位置するこのリゾートエリアの別荘の前で待つ気だったのだと予想しダイヤは自分の気まぐれが功を奏したことに安堵した。


「プレゼントって誕生日?」

ダイヤが尋ねると向かいに腰かけているフルフルとNは首を振る。
失礼と思いながらまるで敵を気にするオオタチみたいだとダイヤは思った。

「ブラックに日頃の感謝を形で渡したいんだ」

「日頃の感謝って具体的に言うと」


少しプライベートに踏み込みすぎた質問だったかと危惧したがNはすんなり答える。

「僕は今まで外を知らなかったから色々な物の名称や使い方、一般常識、人との接し方とか沢山教えてくれるんだ」

その答えにダイヤは少し意外に思った。
ダイヤの知るブラックという人物は面倒を嫌いさらに性格が少し歪んだ言わば手のかかる人で、Nが言うように一から様々なことを教えているとは思わなかったからである。

「プレゼントっていっても普通のものじゃ伝わらないと思って」
「私を頼ってきたってことね、感謝を伝えたいならいいものがあるよ」

立ちあがりダイヤはカレンダーを確認する。その姿を困惑した表情でNは見つめる。


ダイヤはカレンダーの前からパソコンに移動しカチカチとポケモン預かりシステムを呼び出し手早く手持ちのロトムとムウマージをフライゴンとチルタリスに入れ替える。

そして電源を切りNに振り返る。


「じゃあプレゼントを手に入れに行きましょうか!」

「今って朝も早いよね‥‥」

イッシュから飛行機でここまで来たが周りに黙って来たので夜の便でシンオウに飛び別荘に来た。つまり今は朝の日が昇っていない時刻なのだ。

その上何処に何をしにと聞く暇も与えずダイヤは小走りでNに駆け寄る。
そしてNの手を引き、外に出る。辺りに人がいないことを確認してからダイヤは先ほど手持ちに加えた2体をくり出した。

「Nはチルタリスに乗ってね。チルタリス、Nを乗せてフライゴンについてきて」
「うん‥‥」

Nはおとなしくチルタリスにまたがり飛び立つのを待つ。ダイヤもフライゴンに指示を出しながらフライゴンの背に乗る。
直後フライゴンが飛び立ちチルタリスとNは隣にいたため強い風圧を受けてNは慌てて帽子を手で押さえた。

風がやんだころにチルタリスも飛び立ちシンオウの空を羽ばたく。


向かう先が分からないNだったが空からの景色に心奪われあまり気になっていないようだった。




フライゴンが一足先にたどりついた先は知る人の少ないチャンピオンロードの奥の地。
ダイヤはフライゴンを労いながらチルタリスの到着を待つ。

チルタリスはすぐに降り立ち、背から降りたNはチルタリスにお礼を言う。チルタリスは気にしないでというように優しくきれいな声をあげた。

「チルタリス、またお願いするけど今は休んでてね」


ダイヤはチルタリスをボールに戻しNと向き合う。

「まだ時間はあるからこんな時間にここに来た説明するね」

了承を求めるダイヤにNは頷く。


「この先にほとんどの人は知らない花畑があるの、その花は日があるうちしか咲かない不思議な花。
その花は普通に見ても綺麗なんだけど朝日を受けて咲く光景は壮観なの」

いきなり連れ回してごめんね、と謝罪するダイヤにNは慌てる。確かにNはダイヤの行動を非常識だと少し憤慨したが、それは自分を思ってくれていたことだったのだから自分が謝罪すべきだと口にする。
ダイヤは今回は私の方が悪いから気にしないでいいのとNを軽くあしらい話を続けた。


「その花はシンオウではこう呼ばれているの………“ありがとうの花”って」

「“ありがとうの花”‥‥」

思わずNはダイヤの言葉を復唱する。ダイヤは微笑みながら足を進め出しNもその後に続く。


「一応その花は市場に出回ってて人は何か感謝を伝えたい人に花のブーケや鉢植えを感謝の形として送るの。
あなたにぴったりでしょ?」


ダイヤの問いかけにNは首を大きく縦に振る。自分の希望にぴったりのものが見つかって嬉しいらしく目は朝日も浴びていないのにきらきらと輝いている。
ダイヤは歩いてきた道から少し外れた草の道を進む、この先にある花畑は人の手の加われていないポケモンや自然が育てた花畑。

「そういえばダイヤ、その“ありがとうの花”はなんて名前なんだい?」

黙ってダイヤの後ろをついてきていたNがダイヤに言葉を投げる。
するとダイヤは急に立ち止り一拍置いてからNの方へ振り返る。



「その花はグラデシアの花というのよ」


ダイヤはNの視界を遮らないような位置に移動し目で前に出るよう促す。
Nは一歩一歩ゆっくりと足を進め木々の間から開けた空間に立つ。


暗くてよく見えなかった空間も次第に明るくなる空によって花畑だと認識する。そして昇り始めた朝日から一筋の光を浴びた瞬間一斉に緑がピンクへと色を変えていく。
次々と開いていくグラデシアの花、その光景にNは息をのむ。なんて美しい光景なんだろう。


しかしそれだけでは無かった。

花の間から何十体ものNが見た事のないポケモンが顔を出し、グラデシアの花に顔を近づけ姿を変えていったのだ。
そして姿の変わったポケモンは順々に飛び立ち花畑の上で旋回する。

その旋回に合わせて花の花弁が舞い上がりさらにその花弁に朝日が辺り幻想的な光景を作り出した。


「シェイミの花はこび、遠くの地にグラデシアの花の種を運ぶのよ。
ちょうどその時期だと思ったけどNって運がいいね」

茶化し半分の口調のダイヤが説明するがNの視線はシェイミや花畑に釘づけだった。


しばらくしてシェイミ達は飛び立ち花畑は静寂に満ちる。しかしNの表情はとても嬉々としている。

「ダイヤ見せてくれてありがとう!とても美しかったよ!」
「どういたしまして、それでプレゼントはこの花の苗か種がいいと思うの、一緒に育てて花が咲いたとき教えたらいいよ」


ダイヤの言葉にNは種の花が咲いたらブラックをここに連れてきて一緒にこの素晴らしい景色を見ようと心に決めた。



グラデシアの花を君に
感謝と感動を
同じものを共有したいから



fin.



20110330







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