♂主N+ホワイト+ベル
「ブラックブラック」
チョイチョイと袖をひかれたブラックは声の主、Nを見る。
「なに?」
「あの子たちが持ってるカラフルなものはなんだい?」
あの子たち、そういってNが指差した先にいたのは幼稚園くらいの女の子達だった。
彼女たちが持っているものを目を細めて確認したブラックはNに告げる。
「あれは雛あられだよ」
「雛あられ?」
名前を聞いてもしっくりきていない様子のNにブラックは嘆息しながら説明を始めた。
「雛あられってのはあんな感じのお菓子で他にも揚げたやつとか種類はあるけどあれが一番オーソドックスな形だね。君見たことないの?」
Nは素直にこくりと頷き呟く。
「お菓子コーナーでも見たことないよ」
「………えっとちょっと待って、確認のために聞くけど君ひな祭りって知ってる?」
Nはその問いにも素直に頷き「何それ?」と聞いてきた。その素直さに顔が引きつったことを理解しながらもブラックはライブキャスターの電源を入れた。
「で、僕はベルに会いに来たのになんで君がいるの」
ブラックとNはカノコタウンのベルの家を訪ねていた。しかし着いたときちょうどホワイトと鉢合わせてしまい今に至る。
「今日はベルと一緒にひな祭りパーティーをやる予定だったの!男子禁制で!!」
ホワイトは威嚇する猫のように二人をにらみながらベルに抱きつく。
「ふーんじゃあベル、僕たちも混ぜてよ。Nがひな祭りを知らないらしいから教えたいんだ」
「えっ!?N君ひな祭り知らないの?」
「うん。それで結局ひな祭りって何なんだい?」
威嚇を続けるホワイトを無視してブラックは話を進め、ベルは驚きながらNをみてぽんと手を叩いた。
「やっぱり聞くより見るだよね!」
「ベル!?男子禁制って言ったじゃない!!」
その発言にホワイトはベルの肩をつかみ鬼のような形相になる。しかしベルは拗ねたような表情を浮かべホワイトに言い返す。
「もーホワイトはそんなこと言っちゃだめだよ、せっかくのひな祭りなんだから」
ひな祭りという言葉とベルの表情にホワイトは言葉を詰まらせ深いため息を吐き家の中へはいって行った。
「それじゃあひな祭りは女の子の成長を願う行事でひな人形を並べて、雛あられとかちらし寿司とかを食べたりするものなんだね」
Nは目の前に並べられたちらし寿司や桜餅などの沢山のご馳走を少しづつ食べながら確認する。
「そうだよ、最近だとひな人形は出さない家も増えてるらしいけど」
ブラックはちらし寿司を頬張りながらNに相鎚を打つ。
大皿に盛られていたちらし寿司はすでに1/3しか残っておらず、その大半はブラックの胃袋に収まっている。
「だから嫌だったのよ、ブラックがいるとちらし寿司食べれないから」
ぼそりとホワイトは悪態をつきながら桜餅を頬張った。
桃咲く季節
だっておばさんのちらし寿司は絶品なんだもの!
fin.
20110304