ブラックとN
彼、Nが笑うとブラックの心には不思議な感情が湧き出す。
それは恋なんて淡いものではなく、どちらかと言えばどす黒い色を持っていた。
「ブラック、あのね・・・」
今日もNは笑いながら尋ねてくる。困ったような笑みで。ブラックはそんなNの表情が好きだった。
世界で彼が頼るのは自分だけであって、それは優越感を与えられた。
彼がNに求めたのは自分という存在に頼ること。それは何より優越感を得られることだった。
そんなブラックに対しNもブラックと話すと不思議な感情が湧き出していた。
それはLOVEでありLIKEであり、さらにブラックと同じように黒く、しかし清く、不思議な感情だった。
「その答えは・・・」
今日もブラックはNの存在を認めてくれる。意地の悪そうな、でも優しい笑顔で。Nはブラックが大好きだった。
彼だけは自分を否定しない。すべてを受け入れてくれる。それは何より幸せなことだった。
彼がブラックに求めたのは自分という存在のそばにいること。それは何よりも幸せなことだった。
「君達は少しおかしい」
以前チェレンに言われたことだった。
「君達はお互いを求めている。それは別にいいんだ。
けど君達はどこか違う、好きとかよりも互いがいないと駄目になると思ってる。」
憐みと哀しみの混ざった表情のチェレンに彼らは「その通りだよ。さすがチェレン」と返しただけだった。
彼らにとって感情は後から付いてくるものであって、彼らが真に求めたのは存在だけだった。
しかし誰でもいいわけではない。ブラックとNという個々の存在ではないといけなかった。
依存、という言葉がお似合いだとホワイトは怒鳴りつけた。それでも彼らには関係なかった。依存していようと構わないのだから。
心配したアデクが一度二人を引き離した事がある、逆効果だと知らずに。
ブラックはそこまで変化はなかったが、Nはひどかった。ブラックを求め、他人を拒絶した。
その様を見て、あの二人は同じ場所に存在するからこそ均衡が保たれているのだと大人は悟った。
今日も彼らは会話をする。内容は問題ではなく、存在を確かめるために。
境界線
「ブラック、ボクはまた君がいなくなったら死んでしまうかもね」
「そう。けど僕は別に追いかけたりしないけどね」
fin.
20110210