PKMN | ナノ






ダイヤとファイア



指をくるくるとまわしてそれに合わせて外に出ているロトムが動く。
ダイヤはそれを見て笑みをこぼした。

ダイヤは今シンオウからはるか遠くのホウエン地方に向かう豪華客船に乗っており、船の甲板で海を眺めている最中だ。


「ダイヤ、昼飯とってきた」
「ありがとファイア」

横から現れた手に驚くことなくサンドイッチを受け取り頬張る。
受け取ったことを確認した手の主であるファイアも柵に肘をついて並んでサンドイッチを食べ始める。


昔といっても少し前までだが、地方を出ると言ってもいとこのいるジョウト以外行くところもなく、一人で旅をすることが普通だったが最近の旅はファイアが一緒に旅をしている。


仕事を投げるチャンピオンと元チャンピオンは息が合ったらしく、二人で行ったことのない場所や地方に向かうことが多くなった。

主に二人揃ってリーグから逃げてることが多いが・・・


「にしてもツワブキグループの御曹司に会いに行くとか・・・」

一つ目のサンドイッチを食べ終えたファイアは無謀というような声を漏らす。

「仕方ないじゃん、いきなりあんな別荘押し付けられて、顔にシャドボは喰らわせたくなるよ」
「うわ・・・それはご愁傷様だなダイゴさん?だっけ」


ホウエンに向かう要因となったダイヤの別荘の元の主にファイアは心の中で合掌する。

「うんルビーに聞いたけど結構アレな大人だってポケナビって機械の自己紹介が痛かったよ」


「えっと、結局僕が一番強くてかっこいいんだよね」ってとダイヤは面白そうに続けた。
ファイアもその紹介から人物を想像したのか口に手を持ってきて吹き出すのを堪える。

そんな時ダイヤとファイアの周りをあわただしくロトムが旋回しだした。
その様子に二人は疑問をうかべる次の瞬間、船体がぐらりと大きく揺れた。


「何?座礁はないよね、海の真ん中だし」
「あるとすれば海賊か野生の「メノクラゲに襲われてるぞー!!

皆早く中に入れ!!毒にやられるぞ!!」

・・・だとさ、中入る?」

言葉をさえぎる大声にファイアは呆れながら目線だけをダイヤに向ける。
ダイヤはサンドイッチの最後の一カケを口にほおって飲み込んでから柵を手でつかんで伸びをする。


「チャンピオンがノコノコ中に入るとでも?」
「まさか」

のんびりとした空気でもお互いやる気満々の声色に笑いながらダイヤは被害を考えてロトムをボールに戻す。
すると船員が走ってきて二人の腕をつかみ叫ぶ。

「君達!危ないから中に入るんだ!!」
「私達が追い払いますよ」

「私と彼が」と指を交互に向けて言うダイヤに船員は仰天し顔を青くする。


「何をいってるんだっ、トレーナーでも危ない!!」

「ほら、ついてくるんだ」と続けながら船内に連れて行こうとする船員の手を同時に払う。
船先のほうを向いて背後で呆然とする船員に話しかけた。


「ただのトレーナーならまだしも」
「俺たちに言うのは間違ってるな船員さん」

ボールからダイヤはムウマージ、ファイアはボーマンダを取り出した。
気楽な旅だとパーティーは単色パーティーにしていた二人だったがその顔に焦りの色はない。


「てわけで船員さん、絶対ついてくんなよ?邪魔なだけだから

ボーマンダ!威嚇に海に火炎放射、船には当てんなよ?」


ファイアは船員に忠告をしてからボーマンダに指示をだしダイヤとともに船先に歩き出した。
船員は二人のただならぬ雰囲気に呑まれしばらくそこから動けなくなっていた。




船先についた二人は海をのぞきこむ。
そこには10数体のメノクラゲとドククラゲが浮かんでおり、ボーマンダの火炎放射を警戒してもう船を見ていないようだ。


「これならいける、ムウマージ、シャドーボール!」

その声を皮切りに無数のシャドーボールが海へと降り注いでいく。
ボーンマンダに気を取られていたドククラゲ達は避ける術はなく、次々とシャドーボールの餌食となる。
ドククラゲ達はうめき声をあげながら海の中に潜っていき、ダイヤはムウマージに制止の指示を出した。

その様子を黙ってみていたファイアは新たにボールを取り出し、ポケモンをくり出す。

「キングドラ!海の中の奴ら、めざめるパワーで完全に追い払え!」


キングドラは海の中に入っていきファイアとダイアはおとなしく海面を眺める。
キングドラが潜った周辺が波と違う波紋を作る。

波紋ができなくなってから海から顔を出したキングドラ、それを見てニッとファイアは笑う。
そして上空で待機していたボーマンダと一緒にボールに戻す。

ダイヤはムウマージを戻し、少し面倒そうに顔をしかめた。

「船長さんに説明しないとね」
「あの船員からして信じなさそうだな」
「あ、でもファイアカントーのバッジあるしイけるかも」

ダイヤの発言にファイアはなぜそこで自分がと言う分からない顔をした。


「マチスさんは船乗りをしている人なら全員知ってるくらい有名らしいから」
「そのマチスを倒した証のバッジを持ってる俺は強い、と」

ファイアを見かねて説明を付け足したダイヤにファイアは納得した声で返した。


「じゃあ行きますか」


先ほどまで無数のポケモンと渡り合ったとは思えないような笑顔で二人は歩き出した。



終わりのない旅路

「あ」
「どうしたの?」
「リーグに連絡いったら面倒だな」
「やっぱり部屋戻ろう」



fin.



20110123







第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -