>> failing you 「な、なんでや…!」 「そら、こっちの台詞や…」 新しい携帯を買いました。彼女とお揃いにしてみたんですけど思ってもみない奴ともお揃いでした。しかも買った日も色も同じ。しかし相手は白石。さほど気にもならないからよしとしよう。お互いストラップも何もつけていなかったが大丈夫だろうと思って何も言わなかった。 それが間違いだったのだ 家に帰って鞄の中に入れた携帯を開けば、全く見覚えのない待ち受け。え、俺、待ち受けこんな植物やなかった。 いつもは帰り道でも奈緒とメールをしていたのに、今日はしなかった。最近、彼女は真面目に部活を始めたらしく忙しそうだったから、俺からの連絡を平日は控えめにしている。だから…。俺が白石の携帯を持っていると言うことは、白石が俺の携帯を持っている。 「やば…!」 ************** 今日は学校を早退した。理由は少し体調がよろしく無かったからだ。保健室で熱を計れば、38度をすこし上回る熱。よかった、お母さん。私、馬鹿じゃなかったよ。なんて言えるぐらい元気だけどね。わざわざ仕事を抜けて迎えに来てくれたお母さんは、私を家に送ってからまた仕事へ。布団で大人しくしてなさいよ。と釘をさされ、仕方なく熱さまシートをつけて布団に入った。何時もならすぐに眠くなるのに、熱のせいでhighになった私の気持ちのせいか、眠れない。夕方になったら謙也にメールか電話しようかな。寂しいし、ね。それまで何してようかな… なんて考えていたら眠れちゃったみたいで、気がつけば7時前。携帯に手を伸ばしてみても、謙也からのメールも電話も無い。な、んで。何時もならメールくれるのに。忙しいのかな。でも光からはメール来てるし… こないだの新曲 殿堂入りしたって\(^o^)/ まじか。光君はこういう情報を仕入れるのが早い。だから趣味が合う私にメールをくれる。そうだ、光君のブログが更新されてたら部活は終わってるって事だ。すぐに携帯から確認。こ、更新してる。謙也、どうしたんだろう。 考えたら頭痛くなってきた。もーやだ。電話したら分かることじゃないか。 ************** 家に帰ってから暫くして携帯が振動した。 「奈緒?」 誰だ。これは。まさかとは思うが、俺の携帯に誰かが自分のアドレスを勝手に入れたとか?そんなのあるわけない。俺はずっと肌身はなさずに持っていた。そこで気がつく。謙也の携帯ではないのか、と。最近、謙也の周りに女の気配があったのは確かだ。興味本位。本当にそれだけ。 「もしもし」 "け、んや?" 「…ん?」 電話越しに聞こえる声があまりにも弱々しくて、自分は謙也ではないということを伝える事を忘れた。 "…あ、のっ…謙也は?" それでも相手には俺が謙也では無いことが分かったようで、かすれた声で、時々咳をしながら、それで居て強い言葉をかけられた。 「携帯間違ってしもてなぁ、今近くに謙也居らんねん」 "そ、うですか" 「自分、大丈夫か?かなり辛そうやけど」 "ん…ちょっと。あ、お名前…" 「俺は白石蔵ノ介や。奈緒ちゃん…でええ?」 "はい。浪越奈緒って、言います" ゴホゴホと咳を繰り返している。きっと風邪だろう。そんな事を思っていると家のインターホンが鳴った。多分謙也だ。謙也が来たから、直ぐにかけ直す。と言うと電話を切った。玄関先にはやはり謙也が居て、携帯を差し出した。 「浪越奈緒ちゃん」 「なっ…!!」 「電話あったんや。なんか、風邪みたいやった。掛け直しとき」 「お、おう」 「あと」 「ん?」 謙也の肩に手を置いてニコッと微笑んでみた。謙也にはそれだけで笑顔の意味が分かったようで顔が引きつっている。 「明日。二人について、詳しく聞きたいなぁ」 *************** 白石にはできれば奈緒の存在を知られたくなかった。白石は格好いいし、完璧やし。彼女を白石にとられそうで不安だった。彼女との事を全て話したのは当たり前だから置いといて。あの日、電話を掛け直した俺を待っていたのは風邪で頭が痛くて泣いている彼女だった。本当に苦しそうにしていたのはいまでも忘れられない。 "謙也、連絡くれんかったきん…不安やった" 「最近、部活で忙しそうやったし…自重しよかな、と」 "私なんか全然。け、謙也のが忙しいやん" 謙也の負担にはなりたくない。奈緒はそんな事を言うけれど、俺としてはもっと甘えて欲しいし電話もしてほしいし、メールも。俺の方が奈緒の負担になりそうなぐらいじゃないか。いや、負担になる。 "謙也からの電話も、メールも、私には負担にならんし、寧ろ無かったら逆に精神的にキツい" まるで俺の思いを感じたように紡がれた言葉。ここまでお互いに依存できるのはすごく、良いことではないか。 バレちゃった! prev//next |