最終着点は分からない | ナノ








会いたい。

カチカチ、カ、チ。さっきから打っては消し、打っては消している本文。宛先は景吾。景吾が、私と澪を置いて一週間ぐらいあっちこっちを忙しく飛び回って来るから、と出て行ったのは二週間前。ねぇ、早く帰って来てくれなきゃ、寂しくて死んじゃうよ。


「まんまっ」
「なあに、みおちゃん」
「あーっ、ちゃっ、う」


何を言ったのか、正確には分からないけど、何となく。可愛いからなんでも良いけどね。


「みおちゃん」
「みっ、ちゃあ」
「そうそう。みーおーちゃん」
「みぃー、ちゃあっ」


手を振って、叩いて、始終笑顔な澪を見ていると、幸せな気持ちになる。もう、あと数週間でこの子がお姉ちゃんになるっていうのが、月日を感じさせる。ギリギリ年子…かな。先週から臨月で、いつ産まれたって可笑しくない状況。
2人目は男の子らしい。景吾は、若い内に家族を増やしたいらしい。何人増やすつもり?と冗談混じりに訪ねれば、いっぱいとか何とか言ってきてビックリ。


「ただいまー」
「!景吾」
「ただいま。」
「おかえり…なんで連絡くれなかったの、ビックリした」


サプライズだよ、なんて言いながらキスされてしまえばそれ以上何も言えない事、知ってるんだから。


「産まれるときは傍に居る約束だっただろうが」
「…うん」
「向こう1ヶ月の仕事消化も出来る限りしてきた。」
「無理しなくていいのに」
「こんなの無理に入るか」


テトテト歩み寄ってきた澪を、景吾が抱き上げて澪の頬にもキスを落とした。片手で抱いて、もう片手で頬をプニプニしながら微笑んでまた、私にキスをした。


「ぱあぱぁっ」
「なんだ?澪」
「ちゅー」
「あら、」


ちゅ、と澪の唇が景吾の唇に触れた。たぶん、景吾が私にするのを真似ただけなんだろうけど、まぁ、景吾がデレデレ。やだわ、妬いちゃう。なんてね。


「ご飯、これから作るから、お風呂先に入ってくる?」
「ああ、そうする。澪も入れるから」
「お願いね。」


着替えとかを用意するために景吾が澪を床に下ろすと、澪がぐずぐず言いながら景吾の長い足に纏わりつく。景吾さん、顔がゆるんでますよ。トタトタ景吾について走る半泣きの澪はそのままに、景吾はタオルやらなにやら必要な物をすべて持って脱衣場へ向かった。

私はと言えば冷蔵庫を開いて今夜のメニューを…。肉じゃがとかどうでしょう。景吾は何気に和食が好きだから。そして、煮込み始めてしばらく、私が陣痛の始まりに気付くのである。

地味に周期を気にしながら味見したり、食器だしたりしていると、景吾が風呂から上がった。今日はなんか長かったね、と言うと、澪とお風呂でお絵かきしてたんだって。


「あ、そうだ景吾」
「なんだ?」
「今日の夜か明日には入院になると思うから、よろしくね」
「ああ、わかっ……はぁっ?陣痛きたのか?」
「?うん」


まだ不定期だから大丈夫だよ。と呑気に夕飯の支度を続けて居ると、景吾はかかりつけの医者に連絡してくれた。ご飯食べてからでも、大丈夫だよね。澪の分も準備して、入院の準備は景吾がしてくれてるから。


「ったく、呑気だな」
「景吾が居るから安心してるの」


二人目にもなれば少しは慣れますよ。






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