最終着点は分からない | ナノ












小さい手によって投げられた、その手より大きな積み木を景吾が拾って近くに戻す。さっきからそれの繰り返し。景吾が拾う度に、きゃっきゃと楽しそうに笑う、長女、跡部、澪。


「景吾ちょっと手伝ってー」
「なんだ」
「あのお皿、気に入ってるからあっちに送りたいの」
「ああ、あれか」


景吾が取ってくれた皿を箱に詰める。リビングの荷物を纏めれば荷造りが完了する。半年ぶりの日本。明日にはこっちを立つ。こっちにいた半年は、跡部の会社の本社での景吾の研修期間だったため、それが終わり、日本の支社に戻るのだ。
私はもっと長く海外生活が続くと思っていたので、早く日本に戻れて嬉しい反面、慣れてきた土地から離れるのも寂しい。景吾が他の食器を下ろして居るとリビングから、澪がはいはいしている。かと思いきや豪快な音と泣き声。


「澪、転けちゃったみたい」
「ったく、誰に似たんだ?」
「あ゛ぁーっ」


床にうつ伏せたまま泣いている澪を景吾が抱き上げて宥める。景吾は、始めこそ澪に対してぎこちない部分もあったけど、今ではオムツも換えるし風呂にも入れるし、なんでもしてくれる。体をゆらゆらしながら優しい顔をしている景吾が今では当たり前だけど、多分忍足君が見たら気持ち悪いと言うんだろう。
帰ったら立海のみんなに澪を会わせる約束がある。個人的にはすごい楽しみ。蘭の様子も気になる。澪を幸村君に抱かせてあげる約束も、果たせていない。


「楓、澪が寝ちまった」
「お昼寝の時間も近いし寝かせてあげて。」
「わかった」


リビングのカーペットに澪を寝かせてタオルをかけてやった。私も少し休憩。…しようとしたのだけど、それは景吾によって阻まれた。意味あり気な景吾の笑み。


「シようぜ」
「…へ?」
「いくぞ」
「ぅきゃ…っ!景吾!」


軽々と私を抱き上げた景吾は、私をベッドルームへ運んだ。優しく下ろされた先は、やはりそこ。二人分の体重がかかっても、高級なベッドはスプリングを軋ませる事もなく、優しく私達を受け止めた。


「まだお昼なんだけど」
「そうだな」
「……もう、ばか」


景吾の唇が私の首に触れたのを合図に、私は景吾にすべてを任せた。スルスルと体を滑る指がくすぐったい。いつ澪が起きるかわからない緊張感の中、エスカレートする行為。


「っ、は、けいご…そんな、見ないで」
「綺麗だ、楓」


こんなに明るい中で体を見られた事はなかったからか、景吾はまじまじと私を見つめる。恥ずかしい、と顔を背けても景吾は止まったままだ。


「っ、けいごっ」
「見られて感じたのか」
「いじわる…」


私の中心に景吾の指が触れた。私が景吾を欲しているのが、イヤらしい水音で明白になっている。わざと軽い刺激しか与えてこないのは、私の口から言わせたいから。私が求めるまで、景吾はそれ以上をしてくれない。


「おね、がっ…もっと…奥、っあ」
「指でいいのか?」


ぐりゅ、と指をナカで折り曲げたり円をかくように動かしながら、景吾は私の胸にしゃぶりついた。唾液なのか、母乳なのか分からないソレが、テラテラと光る。


「、景吾のがっ、欲しいよ…」
「ハッ、よくできました」


顔から火が出そうなくらい恥ずかしい。ベッドに備え付けの引き出しから、景吾が避妊具を取り出した。結婚してても、こうして避妊をするのは当たり前のようだけど、景吾の気遣いが感じられる。そっと、避妊具を握る景吾の手首をつかんだ。


「どうした?」
「付けなくて、いいよ」
「でも、今日排卵日だろ」
「え?そう、だったの?」
「ああ」


どうして私でさえわかってなかった事を景吾が知っているのか。たぶん、毎朝、景吾がキスをしてくるのは体温を計ってるんだろうな、とは思っていたが、本当だとわかるとビックリだ。


「いいよ。景吾となら」
「…言ったな?」
「うん」
「じゃあ、これはいらないな」


ベッドの下にソレを放り投げて、止まっていた行為を再開した。景吾が動く度に体が跳ねる、私の左手をベッドに縫い付ける景吾の手が熱い。景吾が触れている部分から溶けていきそうなぐらい。


「け、ご、私…幸せ、だよ」
「っ、馬鹿、理性なくなるっ…だろ」


ゆらゆらとゆっくり動かしながら景吾は私の顔に張り付く髪をよけた後に目を細めて笑った。その顔を、私以外に見せないで。そんな意味を含んで景吾の首にしがみついて引き寄せながらキスをした。


「バードキスか」
「なんで?」
「俺はもっと深いのがいい」


景吾のベッドに押し付けながらのキスは、以外と好きだ。すべてが景吾に捉えられて行って、景吾に溺れられる。


「んんん!…ッは、あ」
「っく、…力、抜けっ」
「む、りぃ…!んぁあっ」

良いところに景吾がかすって、精一杯景吾に抱きつく。


「あん、っあ、やぁああ…けご…っ」
「楓…っ愛して、る」
「ん…っはあっ、わた、わたし、も」


他の誰より、愛してる。
私の中に流れる景吾の白濁すら愛しい。2人で抱き合ったまま息を整える。まだ、まだ離れないで。


「ね、景吾…私、」
「?」










「私、すごく幸せだよ」










fin.












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