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※二年越しのプロポーズ設定です



今日は世間一般に広く知れ渡っている父の日である。ここ一週間ほど、子供達が俺に隠れてこそこそと何かを準備していたことはもちろん知っているが、ここはやはり知らないふりをするのが父としての役目だろう。名前は特にいつもと変わったことをしている素振りは見せなかったが、昨日実家に帰って自分の父にプレゼントを渡してきたのだと言っていた。日曜日と言うこともあって、俺の仕事は休みだ。体力づくりのために毎朝続けているランニングから帰ってきてもまだ子供達は寝ていた。名前は起きて朝食を作っていたが、シャワーを浴びてリビングに現れた俺を再び寝室に推し戻した。

「二度寝してていいよ。」
「でももう直ぐ子供たち起きてくるし」
「いいから!ね!とにかく布団に入って寝たふりでもしてて」

ニコニコと楽しそうな顔をされては別に抗う必要もないし、と髪は生乾きだったが布団に戻った。ベッドの近くに置いているゴミ箱には昨日の夜の残骸が丸められて捨てられている。さすがに三人の子宝に恵まれたら、そろそろ避妊もしておくべきだし。たまには生でもしたいけどそれはタイミングの問題もある。たった0.03mmの膜でさえ、一度生での快感を覚えると億劫でしかないのは傲慢だろう。そういえば昨日の夜の時点で残りが少なかったから買い足しておかなければいけないし…そんなことを考えていると、子供達が起きだしてきた音がした。
廊下を慌てた様子で走ったのは和華だろう。双子も少し間を空けてからリビングに向かったようだ。

「パパもうおきちゃった!?」
「大丈夫よ。まだ寝てるわ」
「良かった〜!」

和華の様子だと、多分俺を起こす予定だったのだろう。それを知っていた名前が俺を再び寝室に推し戻したのだと分かった。パパ起こしてくるね!と言った和華がリビングから寝室に入って来た。もちろん俺は寝たふりをしている。

「パーパー!あさだよ!」

小さい手で俺の肩をゆすったり、耳元で呼びかけたりする姿はもう天使以外の何者でもないと思った。にやけそうになるのを我慢して狸寝入りを突き通していると、双子も参戦してきた。勢いよく俺の上に飛び乗ってキャッキャされると、さすがに起きるしかない。

「パパ起きた!」
「おはよ、のど。真琴と真尋もおはよ」

布団の上で転げまわっていた双子を脇に抱えて(それさえ楽しそう)和華とともにリビングに向かう。名前はこうなることが予測済みだったみたいで、何事も無かったかのように食卓に座った。

「のどね〜パパにお手紙かいたんだよ!」
「僕たちも!」

おもちゃ箱の下から三人が出してきたのは、スケッチブックの一ページと、便箋。それぞれが書いたで俺の似顔絵は、お世辞にも上手いとはいいがたいものだったが、自分の子供が書いてくれたものだと思うと価値の付けようが無いほどすばらしい作品に見えた。手紙の文字だって大きさはばらばらで便箋の罫線も無視した書き方だったけれど、今まで誰からもらった手紙よりも嬉しかった。やっぱ家の子天使だ、と不覚にも泣きそうになった。

「パパいつもありがとー」
「すっげー上手!パパのために、ありがとうな」

ギュウと三人まとめて抱きしめた。子供は三人で十分とか思ったけど、やっぱ天使は何人居てもいい。
感動して抱きしめたままでいる俺たちを暖かく見守っていた名前も抱きしめて、軽くキスをした。この子達がいるのも全部名前が居てくれるおかげだという意味もこめて。ほくほくした気持ちで家族団らん朝ごはんを食べた。時刻にして午前8時。

「きょうはどこかお出かけするの?」
「どこか行きたいところある?」
「ショッピングモールでヒーローショーがあるらしいから、そこに行かない?」

ヒーローショーの単語に眼を輝かせたのは双子だけではなく、和華もだった。三人が楽しめるのであればそこで構わない。俺が賛成すると、子供達も嬉しそうだった。
父の日と言うこともあって、大型のショッピングモールは混んでいた。車はかろうじて置くことができたが、人の多さはやはり都会だと思わされた。さすがに6歳と5歳になれば子供達を抱かなくていいが、そうなると迷子の心配性がでてくる。はぐれてしまわないように気をつける必要がありそうだ。

「和成」
「どした?」
「…なんでもない」

何か言いたそうではあったが特に追求することもなくその場は過ごした。
結局朝一番のショーを見て、日用品を買って帰宅した。まだ日中だったこともあり、近場の公園へ子供達を連れて遊びに行って。その間に名前は家事を済ませるために家に残っていた。晩餐を食べて、買ってきたケーキを食べて、子供達を風呂に入れて、寝かせて。いつもと同じ日曜日だったけれど、同じじゃない。それで今日一日は良かった。
あとはまぁ、名前を抱き潰すだけである。







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