私の友人は、かなりヤバい。なんか、ヤバい所が多すぎてツッコミが追いつかないくらいヤバい。また薄い本買っちゃったぁうふふ。と幸せそうで何よりなんだけど、この子が持つと、薄い本が分厚く積み重なるのだから侮れない。 「今日も私の緑高は元気だわペロペロ」 高校時代、彼女はイケメンと噂(噂てか事実)の緑間君と高尾君の、恋仲、を取り持ったらしい。そういうのに偏見はないけど、余計なことしやがってと恨まれても仕方ないことしてるよ、この子。だってあんなに良い遺伝子持ってる二人が…とか。 「名前もそう思わない?」 「え、え?私は、別になにも」 まぁ、緑間君と高尾君なら許そう。百歩ゆずってね。でも、彼女は私の彼氏までもおかずとして消化してしまうのだから苦笑いしかできない。将に健全なお付き合いしてる私からしてみれば考えられないことだし。 「ねー黒子君は?あ、火神君もこないの?」 「テツ君は会う予定だけど、火神君はしらない」 「そーなの?あぁ、火黒ぉ」 最後の一言は聞かなかった事にしよう。うん。テツ君が火神君となんて有り得ない…よね?だってテツ君はああ見えて割と攻めたい側の人だから、いくら見た目が受けっぽくてもないない。 「あのね、一応言わせてもらうけど、テツ君はストレートだからね」 「当たり前でしょう」 ………間。 「テツ君いつの間に」 「今です」 時間が押してるので早くしてください。と隣の椅子に置いていた私の鞄を取ってテツ君は友人に頭を下げた。 「今からデートなので、これで」 「いつか火黒おがませてね」 「僕と火神君を変な妄想でペロペロするのはやめてください。」 僕だけならまだしも、火神君までするのはいただけないです。とプンスカしながら言った所でその言葉さえ友人にしてみれば美味しいおかずだということに気づいてほしい。ほら、変に顔緩んでるじゃないか…とりあえず火神君全力で逃げろ。 初めて友人をテツ君に紹介したとき彼は新しい人種に出会ったと言わんばかりに唖然としていたが、今では友人の虚言を軽く無視するくらい扱いに慣れている。さり気なく繋がれた手を引かれながら大学を出た。今日はこれからテツ君の好きな作家が原作の映画を見に行くのだ。私もそれなりの読書家だと自負していたが、テツ君はさらに上を行っていた。まぁそれが付き合うきっかけだった訳だけど。出会いこそ合コンだったが、今ではよかったと思える。 「たのしみだね」 「ですね。あ、この前話した新刊、読み終わったので回しますね」 「本当!ありがとう」 二人で居ると大抵本の話だったり、映画の話だったりの話しかしない。お互いに趣味が合うし、たとえ意見が食い違ってもお互いに咀嚼しあえるくらいだから喧嘩もない。 「私も新しい本買ったのハードカバーのやつなんだけど」 と、本のタイトルを告げると、テツ君は僕も気になってたんです。と目を輝かせた。テツ君は私が持ってない本を持ってて、私はテツ君が持ってない本を持ってる。もはやそれが普通になってて、当たり前なのだ。 ************** 映画を見終わって、満足感に浸りながらテツ君と感想を述べつつ帰路をたどる。それが映画を見に行った日の帰り道。ひとしきり感想を言った後で、テツ君は話題を変えた 「夕飯はどうするんですか」 「んー、特に用意はしてないよ。食べて帰る?」 「いえ、久しぶりに名前の手料理が食べたいです」 照れることもなく、真っ直ぐな瞳で言ってのけるテツ君はかなり男前だった。そしてこの誘いは、テツ君の家への誘いでもある。 「駄目なら…いいですけど」 「ダメじゃないよっ!」 「そうですか、じゃあ行きましょう」 ふっと目を細めて笑うテツ君に胸がきゅううと苦しくなった。やばい、凄いかっこいいや。 テツ君の家にある食材の他に野菜やらデザートやらを買って帰る事にした。スーパーのカートを2人でおしていると、テツ君の部屋と同じ階に住んでいるおばさんに出会った。テツ君は気に入られているらしく、にこやかに話しかけられた。 あら〜黒子君の彼女さん?可愛いわね〜2人でそうやってると夫婦みたいよ、若いっていいわぁ〜と沢山話してくれるおばさん相手に、黒子君は 「自慢の彼女なんです。」 「いつかはそうなれたらなって思ってます」 とノロケともとれるような返しばかりするものだから、私はなんだかむず痒かった。 思わぬ刺客に足止めとなったが、無事スーパーをあとにした。そこからテツ君の家はすぐそばだ。 「久しぶりですね。家にくるの」 「そーだね。」 「泊まりますよね」 え、と思わず言ってしまい、テツ君を見上げた。口角が気持ち上がっていて、何時もは奥深くに隠れているテツ君の中の狼が出てきていた。 「溜まってるので、今日は帰さないし寝かせません」 「っ!ば、ばか!ばかばか!」 いつだったか、テツ君自身から聞いた話。テツ君は私とつき合い始めてから自慰をしなくなったらしい。ああ、そうだ、青峰君が下世話な話ばっかししてた宅飲み会で聞いたんだ。私が居るから自慰なんかで処理するのはもったいないと決め顔でいってたんだっけ。あのときはテツ君もアルコールが入ったからあんなこと言ったんだよなぁ。と懐かしい話を思い出して顔があつくなった。 顔を赤くした私に満足したのか、クスクスと笑っていた。そんな所も好きだけど! 「もーっ、早く帰ろっ」 「はい」 繋がれた右手の力を強くして、照れ隠しに足を早めた。 ───────── 友人は、私の友人モデルです。 それからその友人に献上した緑高 →腐向け注意 |