毎日、健気に俺の部活が終わるのを待っている名前を可愛いと思う。柄にもなく無意識に頭を撫でてしまうぐらいには愛着が沸いていると思っていた。だが現実は全くちがった。愛着なんて可愛いモンじゃない、俺が名前に抱いている感情はどす黒い独占欲と執着。 「なに?もー火神君」 クシャクシャと癖毛を撫で回すと、やめてよーと良いながらもイヤではないようで、さり気なく俺のジャージの裾を握った。 「家、寄っていくか」 「ぁ…」 さっきまで普通に笑っていた顔が急に熱を持ち始めたのが頬に触れていた掌から伝わってきた。家に来る、と言う事の意味が伝わらないような関係ではない。今までに何度も家に来て、暇さえあれば泊まることもあったのだから。 敷居を跨げばそこはもう俺のテリトリー。一歩入れば後はなし崩し的に獲物として俺に捕食されることはもう、理解出来ているだろう。 「…うん」 既に俺を誘うような表情をして、頷いた名前は、鈍い。 アメリカで居た頃から今まで、経験はしてきた。日本よりはるかに性への意識が低いあっちではインスタントなものだった。同じ女を何度も抱くなんざ、有り得なかった。のに、 今、家に上がった名前が、靴を脱いだ瞬間に膝裏に腕を回して抱き上げ、二人分の荷物を上がり口に置いたままベッドに二人で倒れた。口内を舌でムチャクチャにして、端から唾液が零れるのも無視したキスをすれば簡単に名前はマグロだ。 数え切れないほどこのベッドの上で繋がったとは思えないほど容量の少ない、処女のような思考回路は多分もう機能を果たそうとすらしていない。 「はぅ、かがみくん」 「やらしー顔」 「ん、っ」 がぶ、と耳に噛みついた。右より左の耳の方が弱いよな、と言えば身をよじって羞恥を紛らわせようとするのも知っている。するすると舌を這わせていくと、前に付けた跡がまだしっかり残っていた。まぁ、つまり、そんな日にちが開いてない訳。 「もー濡れてんじゃねーか?」 「や、言わないで、よぉ」 感じやすいし濡れやすい、締まりも良いし口淫もなんでも、そんなヤらしい体に改造したのは他でもない俺。なのに名前はそんな痴態を晒すのが嫌だと。 いきなり指を三本突っ込んでも上手く飲み込んでギュウギュウ締め付ける癖に。 「やぁ、っ…ん、ぅあ」 「こんだけ濡れてたら大丈夫か」 ピッ、と口で開封した避妊具の外装。待って、と制止する言葉は指で与える快感に流されたようだ。コレをつけるのも慣れたもんで、あっという間に入り口に先端を擦り付けた。 「まっ、や、めっ──あああっ」 「おぃ、っ、締めすぎ‥だ」 「ふ…ぁ、くるし…奥っ」 「まだ入るだろっ…」 何度入れても狭い。一番奥の壁にぶつかっても押し込まなければ全て収まらないとは、アメリカでは経験出来なかった。「火神君はコレもアメリカサイズなんですね」と名前とも仲のいい黒子から言われたときに漸く気づいた。名前が小さいんじゃない、と。 でも慣れてくれば呑み込むようになるのは本当らしい。最初は半分で泣き叫ばれたぐらいだから。 「火神っ、く、…んっ、かがみ…ぃ」 「ばあーか…」 煽ってどーする。 いかにも女の腕って感じの柔らかい二の腕とか、抱きついてきたときのシャンプーの匂いとか、今、耳元で吐息混じりに喘ぐ声も表情も、見えないけど想像するだけで下半身が反応した。 「ぅ〜…っ、つ、」 「今日、マジで締めすぎ‥」 「火神、く、っが…いつも、より、おっきぃ」 動かないで待っていてやれば、息を整えながら、また可愛い事を言ってくるもんだから素直な俺の下半身は反応を示すわけで。 「なな、なっ、…!?」 「俺、悪くねーから」 腰を引けばヒュッと名前の喉が鳴った。間髪入れずに突き上げたい衝動に駆られたが、あえてゆっくりと押し戻した。じわじわと俺の形に膣が広がる感覚に体を震わせた。何度もそれを繰り返しながらスピードを上げるのが俺達のスタイル。まあ、感情が荒ぶっているとき(試合前とか、嫉妬したときとか)は別として。 「んっ、‥あ、あぅ」 「はぁ、痛く、ねーか?」 「うん、っ…」 いつからだったか、最中に相手を気遣うようになったのは。多分、日本で、名前にあうまではこんなこと聞いたことなかった。痛いって泣かれるのが怖い。それだけ彼女が大事なんッスね!とかアイツが言ってたな。確か。 「っ、んぁ、ああっ…ゃ、ぁ‥」 背中にピリッとした痛みが走った。俺はこれをもう限界、の合図だと思っている。名前の頬にキスを何度もしながら、腰の打ちつけを早めた。 そんなに時間もかからず二人で果てたが、正直俺が一回で満足するわけない。無理無理と言いながら最後までつき合ってくれたが、終わった瞬間に気を失うみたいに眠りに就いてしまった。汗で額に張り付いた髪を横に流してキスをした。少し表情が軟らかくなったような気がした。 目が覚めて一番に好きな人が居るのは、幸せだと思う。抱き枕みたいに名前を腕と足で完全にホールドして瞼を閉じたのは覚えている。しかしいつもは俺より先に起きてしまうので、起きた時に腕の中にいるのが新鮮だった。起こすのは勿体無い。どれくらい眺めていたのか定かではないが、名前が起きた。 「お、起きたか」 「ん‥〜」 名前はまだ寝たりないと胸板に額をグリグリ押し付けて落ち着いた。 「俺部活なんだけど」 「…………ん」 「名前」 「…キスしてくれたら起きる」 自分で言っておいて耳を赤くしている名前に、要望通りキスをした。満足げに笑う名前を見れるなら、こんな朝も良いかもしれない。 fin. |