同窓会。あのお金持ち学校のそれは、予想道理というかなんというか。高級ホテルの広間を貸し切っての立食パーティー。私は来る気なんてさらさらなかったのに、今朝起きて、ソファーにおかれていたドレス。彼が用意したのは一目瞭然だった。しかも今日のパーティーは彼の誕生パーティーも兼ねて居るとかいう噂。 仕事から帰れば家にはきっちりスーツを着た彼が立っていて、風呂に押し込まれ、ドレスを着せられ、髪まで彼がアレンジして。高級車に押し込まれた。私に拒否権など初めから用意されていなかったのだ。 「私は家でまったりする予定だったの」 「まぁまぁ、そんな顔したら、折角の美人が台無しやで」 隅のソファーでワインを片手に元レギュラー達に愚痴を零した。周りからの目線なんて、慣れた。何年彼に付き合ってきたか分かってる?中一から11年。人生のほぼ半分を彼と歩んだのだ。肝心の彼は私を降ろして置いてどこかへ行ってしまうし。何故か私と彼が別れたとか言う馬鹿な噂まで流されているし。別れられるなら別れてるわよ!今まで何回彼に泣かされたか…。 「あー…思えばこの11年、長かったわ」 「その口振りからすると、別れたみたいだぜ」 「まだ別れてまーせーん」 「まだ?まだって事は別れる予定でも?」 嫌みったらしく突っかかってくるのは滝。相変わらずいけ好かん。ぷいっとそっぽを向いて、ケーキと呟けば滝はクスクス笑いながらとりにいく。昔から、私の機嫌を一番左右しては持ち上げてくれる。 「やだわ。跡部様が居ないからって男に囲まれて。はしたない」 「ほんとうね」 うざってー。小さく呟いたら宍戸の拳骨が降ってきた。相変わらず暴力的!大体私がこいつら呼んだんじゃないわ。勝手に群がってくるのよ!空になったワイングラスを岳人に押し付け、足を組み替えた。 「もーやだ。帰りたい。忍足送って。」 「何言うてるん。まだ始まったばっかりやんけ」 「だって景吾は来ないし、嫌み言われるし?それに見たいテレビの予約すらする時間くれなかったのよ。今日から始まる連ドラをちゃんとチェックしておかないと」 ペラペラとよく喋る口でごめんね。でも喋ってないと、聞きたくない事まで聞こえてきそうだから。出来るだけ喋りたいの。ひとしきり思いの丈を吐き出していると、周りの空気が変わった。悠々と現れた彼のせいで。 「堂々と浮気してんじゃねーよ」 「何が浮気よ…景吾が早くきてくれないから私ばっかり言われたい放題だったんだから」 「言いたい奴には言わせておけと言っただろうが」 忘れ物、と私の左手に指輪を通し、その手を引いて私を立たせた私もかなりの高さのヒールを履いているけど、やはり景吾の身長には及ばない。 「来い」 「え?ちょっと、」 グイグイと強引に引かれ連れて来られたのは壇上。マイクを手にした景吾の隣で(何故か)立たされた。景吾の言葉に、会場にいる全員が耳を傾ける。勿論、私も。 「俺たちが別れたとか噂流してる奴。残念だな!俺たちは婚約している」 「えっ!(そうなの!?)」 挨拶なんて最初の一言だけで、まさかの婚約してます発言。私すら今知ったよ?おかしくない?呆然と立ち尽くす私を抱き上げた景吾は、満足げに段から降り、会場を出た。私が正気に戻ったときには既にホテルのスイートルームに着いていた。 「ま、って。私何も…」 「馬鹿。んなことだろうと思ってたが…指輪ちゃんと見たか?」 「指輪?」 さっき景吾につけられた指輪のこと何だろうと思う。そう言えば、慈朗ちゃんがすごいまじまじと見てたような気もする。まさか、これ、 「ホントに、私でいいの?」 「不満か?」 ブンブンと首を横に振って否定すると、フッと顔の力を抜いて景吾は微笑んだ。 「俺の欲しいものはお前の時間だ。これから先、一生の」 だから、だから、誕生日何が欲しいか聞いても教えてくれなかったの?言ってくれたら、良かったのに。私の答えは一つしか用意していなかったんだから。 「あげるよ、それくらい」 「いいのか?これを断らなかったら、次にお前が自由になるのは死ぬときだぜ?」 「いいよ。」 その代わり、私だってあなたを離さないわ。 11年、一緒にいて、一番嬉しい。どんなに喧嘩しても、ムチャクチャ言われても、別れなかったのは景吾が好きだったからで。心のどこかで景吾からの言葉を待っていた。 「名前、俺様が幸せにしてやる。結婚してくれるか?」 「っ、はい!」 今年の誕生日は、これから先の私のすべてと、最高の笑顔をプレゼントするわ! 2011.10.04 happy birthday Keigo.A |