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「ね、亮」
「ん?」


ベットに横になって、亮の肩越しに見える夜空。ここ数年の今日は、雨が多い気がする。厚い雲が空を隠して、出来すぎた物語のように、綺麗に晴れた夜空に架かる川なんて滅多に見られない。特に、一日中光が溢れる都会では。


「織り姫と彦星は、会えたかな?」
「会えてるだろ。だって、一年にたった一回なんだぜ?槍が降っても会いに行くだろ」
「そう、だよね。」


亮にこんな話をしたら笑われるかもしれないと思っていたから、ちゃんと返事をしてくれたのが少し驚きだった。それが嬉しくて、亮の背中に回した手に力を込めて、間に隙間が無くなるぐらい密着した。トクン、トクンと鼓動を刻む音が聞こえる。私のものに比べたら幾分か落ち着いていて、やっぱり亮は大人なんだと思った。


「どうしたんだ?急に」
「…もし、もしだけど、私と一年に一度しか会えなかったら亮はどうする?」


流石に唐突過ぎただろうか。亮は暫く何も答えなかった。


「俺は、一年に一度でも、お前が好きだ」
「うん」
「罪を冒してでも、毎日会いに行ってやる」


織り姫と彦星のように、一年に一度しか、こうして亮に触れられなかったら、私はきっと枯渇していく。全てが色褪せて見えて、亮が傍にいないことに絶望してしまうと思う。考えただけでも怖い。


「なっ!なんで泣くんだよ!」
「うぇ、だって、亮と離れるの、やだ」
「…は?え、マジでどっか…」


私が泣いた上に、亮と離れたく無いなんて言ったものだから、亮は私が本気で何処かへ引っ越してしまうと思ったのだろう。首を横に振って精一杯否定すると、安心したように息を吐いたのがわかった。


「そ、想像したら、」
「馬鹿。そんなのありえねーよ」
「ふぇ、?」
「一生一緒なんだろ?」
「な、なんでそれ!」


亮が言った言葉は、昼間私が短冊に書いた願い。たった一枚、たった一枚だけしか書かなかった私の切なる願い。"亮と、一生一緒に居られますように"我ながら恥ずかしくて、他の人にバレないようにこっそり吊したそれを、亮はしっかりみていたんだ。驚いたら涙は引っ込んでしまったが、亮は私の目尻にキスを落とした。


「お前が考えることなんか、バレバレなんだよ」
「もー!ズルイ。亮だけ私の知ってるなんて」


なんて書いたのか聞いてもしぶってなかなか教えて貰えない。テニス関連だろう、となんとなく予想は出来る。
深く追求するのも疲れるので、早々に切り上げて、亮に背中を向けた。別に怒った訳ではないので、背中はぴったりと亮にくっ付いたままである。


「寒くないか?」
「亮があったかいから大丈夫」


背中に、しっかり亮の体温を感じているのに物足りない。一度向けた背中をやっぱり離して正面から抱きついた。暫くそうして居たけど、私が欠伸をすると亮は枕元のリモコンに手を伸ばした。エアコンの温度を上げて、電気を消す。


「明日、ちゃんと起きれるかな」
「寝てたら置いてくぞ」
「えー」
「…嘘だよ」


ちゅ、と触れるだけのキスをして、私は目を閉じた。



(同じこと書いてたなんて、)







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