short | ナノ







私には彼氏がいる。
校内でも屈指のイケメン集団テニス部のなかでも、レギュラーでかなりのイケメン。糖分接種が趣味な丸井ブン太である。その人気は仁王君、幸村君と並ぶが、仁王君は大人の色気ムンムンで幸村君は優しい物腰とは裏腹な真っ黒い部分がたまらないとかなんとか。ブン太は優しいし、面白いし、ムードメーカーで、格好いい。普通の子なら、その笑顔を見ただけで心を奪われてしまいそうだ。自分で言うのも何だけど、最高の彼氏を持ったと思う。
なのに、そんな丸井君の彼女は私みたいな平凡娘で、昔は結構反感買った。私自身も反感を買うのは分かるし、仕方ないと思う。多分、私以外の誰か平凡な子がブン太の彼女だったなら、私も少なからず"どうしてあんな子が…?"と感じるだろうから。でも今ではそのイジメもほとんど皆無に近い。その理由はブン太にある。








「おっはよー!」


朝一番、私の戦いは始まる。仁王君を引き連れて朝練終わりなのにやけに元気なブン太が教室に入ってきたその時から。教室に入ってきたブン太に私は目線を合わせたり手を振ったりするわけでもなく、ただ、一瞬目を向けてまた、友達と話始める。いつも同じ。付き合い始めた頃はもっと、おはようとか、アイコンタクトとかをしていたことだけは履き違えないで貰いたい。かと言って、愛が冷めた訳でもなく、この後のブン太の行動。前から変わらず続いているそれが、私がそうせざるを得なくさせた。


「名前おっすぅ〜」
『おはよー、』


まず、後ろから抱きついてきたブン太の手が首に巻きついた。多少照れても、そこまでは私も周りも全くノープロブレムなんだけれども。そこから先は空気を読め、と言いたくなるような行動なのだ


『ひゃ!』


カプリと私の耳をブン太が噛んだ。まあ、いつもだけど(これ、重要)。そこからはキスしてきたり、舐めたり。流石に毎日となれば、初めの頃は恥ずかしくて目も当てられないと言っていた子達も普通。まるでブン太と私が空気になったような態度だ。そう、これが朝のショートが始まる前、先生方が教室に入ってきて止めるまでが毎日の流れである。流石にブン太ファンでも、ここまで毎日公衆の面前でこんなことされるのは恥ずかしいのではないだろうか。

以前、(私が最後に呼び出された時)ファンクラブの一番えらい人に私は「さすがにあれはやり過ぎだってあんたたちからブン太に言ってよ!」と怒鳴った。そして、彼女達は同情の目を向けたのだ。"惚気にしか聞こえないわよ!"と言い返されるとばかり思っていた私にしてみればかなり意外な事だった。言ってもブン太、聞かないんだもん。とその人は呟いた。それを聞いて私の中の不満が弾けた。止まらなくなった私の口から、ブン太と付き合い始めてからの愚痴がとめどなく溢れはじめたのだ。その私の愚痴を逃げずに最後まで聞いてくれた彼女達は実はかなりいい子何だと思う。そして長らく語らっていたら、私を探していたらしいテニス部の中の私を探し当てた仁王と赤也ペアに驚かれたのだ。
私が呼び出される=リンチ。なテニス部にしてみればさぞかし信じられない光景だったに違いない。しかし、あれ以来(一年以上前)呼び出し所が嫌がらせも無いのは、あの時の私の愚痴をファンクラブも理解してくれたんだと思えば、無駄な事では無かったんだと思う。みんなブン太がいかに面倒くさいか思い知ったのだろう。ファンクラブからのブン太への告白はめっきり無くなったみたいだ。でも、差し入れは相変わらずだけど。


『ブン太、やだ』
「俺もやだ」
『こういうことは家でも出来るじゃんか』


机に伏せようとしたってブン太に抱きしめられているからできないし、私が仁王君と話をしたり、笑うだけでブン太は一々耳を強めに噛んだり、仁王君にガンを飛ばしたり、と仁王君に失礼な事ばかりする。でもそろそろ先生が来る頃…考えていれば、やはり。ガラリとタイミングよく先生が教室に入ってきた。


「おーい丸井。朝のイチャイチャタイムは終わりだぞー席つけー」
「やだ」


いつもは聞き分けよく席に帰る癖に今日は私に強く抱きついた。駄々こねてる。なんて仁王君が面白そうに笑ったので軽く手を叩いてやった。先生も面白そうに「先生困るだろー」とか言ってる。もっと本気で止めろよ先生。駄々っ子モードのブン太は私の手にも負えない。とにかく気が済むまでは相手にしてあげなければいけないのだ。


「丸井、駄々こねても可愛くないぞ」
「スキンシップだよ!」
「どうせなら先生、女子が我が儘言う方がいいな」
「センセーの意見なんか聞いてないナリ」


生徒が生徒なら教師も教師だ。どうにかしてくれ、と呆れた顔の仁王がみている。そんな仁王をみていたら、ブン太が私にまた、キスをした


「ちょっと、ブン太!」
「名前が仁王なんか見てるからだろぃ!」
「なんでも良いから席帰りなさい」


優しく言っても聞かないブン太には少しきつめに言う。それでも効果なんて期待出来ないけど。さらに強くなった腕に締め付けられる。ああ、やっぱり効果なんて無かったか。


「じゃあ今日の連絡事項は…」


先生も飽きたのか、私たちを無視してショートを始めた。ああ、もう。仕方なく私もブン太を無視して先生の話に耳を傾けた。











「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -