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リア充には、よく居る。どれくらい相手の事が好きなの?とか聞いてくる奴。ぶっちゃけウザイ。でも、蔑ろにはできないのが私の欠点。へらへらと笑って愛想良くしてるしかない臆病者。嫌われたくないからとか言って、嫌なことされたって笑ってごまかしてればいつの間にかこんなポジション。辛い。


「日吉君とあんまりイチャイチャしないからさー、」
「好きじゃなかったら付き合えないよ」


分かりきった事を聞くな。鬱陶しい。確かに私は日吉若とつきあっていながらベタベタしたり、必要以上にくっつかない。でも、私たちは確かに好きあっている。若は私のすべてが好きだと言ってくれたから。そんな彼にきちんと想いを返せている筈なのだけど。


「じゃあさ、何処までいったの?」


はい来た。定番。何で他人に私達の事を言わなければならないんだ。ほっとけ。それでも外側の私は困ったように笑っているだけなのだけど。私と若は付き合ってもう一年になるのにそれぐらい察してほしい。いくら公表されたのが数ヶ月前だからって、それぐらい分かれよ!若だって男なんだから。


「でも、日吉君って案外オクテっぽいよね」
「えーでも、すっごい優しくしてくれそう」
「したくないって言ったら聞いてくれそうだしね」


馬鹿だな、全く若の事を知らないから損なことが言えるんだ。初めて若に抱かれたのは付き合って1ヶ月ほどの若の誕生日。確かにあの時は優しかった。でも、回数を重ねる毎に激しくなってきている。嫉妬なんかしたときには次の日泣くのは私だ。独占欲の塊な若は私の体中に鬱血痕を残し、隠しきれないところにまで浸食させる。
みんなの思う若は“ストイックな彼氏”なのだろうけど、そんなこと無い。


「ねぇ、日吉君!」
「は?」


そこで本人に話を振るのもどうかと思うが、若、いつの間に帰ってきてたんだろうか。さっきまで居なかったのに。面倒くさそうに私達へと視線を向けた若は私達の話に耳を傾けた。


「…ストイック、な」


私にしかわからないぐらいだったけれど、彼の長い前髪の向こうで若はいじらしく目を細めた。ぞくりと背筋が冷たくなった。若があの表情をするときは、絶対よからぬ事を考えているのだ。実際に、この前は私のだいっきらいなお化け屋敷へ引きずり込まれ、その前は部活中の部室で襲われ、そのまた前は……思い出すだけで怖かった。


「跡部様みたいに肉食なのは名前には合わないかもしれないけどねー」


ちょ、バカァァァァ!跡部さんと若を比べるの一番駄目だよ!むしろ若の方が肉食獣なんだからあんまり刺激しないでくれよ!って言うか私に肉食系が合わないってどんな基準でそんなこと言ってるんだよぉぉぉ!


「わ、わたしは跡部さんより若のが何倍もいいし、わかが肉食でも私には、若しか居ないもん」


若の機嫌取りは早い方がいい。だから、顔から火が出そうな恥ずかしい台詞を言ってみたのだけど、果たしてこれは良い方向に言っているのか。周りの冷やかしに負けじと顔を両手で覆い隠した。あー恥ずかしい。


「あー、もー言わない。はずか…」


言い終わる前に、若によって頭を引き寄せられ、こめかみに感じた暖かい何か。周りから聞こえるため息や黄色い声。まさか、人前では借りてきた猫みたいになる若が、そんな。わけ、無いのに。


「悪いな。俺はストイックじゃないんだ」
「な、な、な、わか、え、」


驚いて顔をあげたのが最後、目の前には若の綺麗な顔があった。簡単に侵入を許した舌が絡んでイヤらしい音をさせ、ようやく離れた時には若の満足そうな笑顔が目の前にあった。





(ば、ばか!)(お前が可愛いのが悪い)


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