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※M彼女とS彼氏の事情続編です!












「本当、目障りだって何度いえばわかるのよブス!」「幸村君が迷惑してるって気付きなさいよね!」


やばばばば。なにこの暴言パラダイス…!たまんないんだけど!!下唇噛みしめてなきゃにやけるのを押さえられない。や、まてよ、精市がこの間言ってたような気がする、にやけるのを我慢しなくていいんじゃないかって!


「なによ、黙り込んじゃってさぁ?キモイんだけど」
「さっさと別れてって言ってるの。返事ぐらいできないの?」


ふっと力を抜いた瞬間、思わず笑ってしまった。この、理不尽な言い分がマジでイイ!一回されたらやみつきになっちゃうってほんとみたいだね!改めて痛感したよ。にやりと笑った私が気に入らなかったのか、徐々に女子グループの声色が荒々しくなっていく。あああっこの、スリル!たまんない!


「っ…笑ってんじゃねーよ!!」


パンッと乾いた音がして、左頬がヒリヒリと痛む。なななな、殴られた…!初めてだよ!と喜んだのもつかの間だった。


“殴られたら…ね”


…私死亡のお知らせ。一気に熱が冷めた。これは精市にばれたら駄目だ。私は勿論だけど、この子たちがどうなるか!下手したら学校来れなくなるよ!


「…やばい、やばいよ。私死亡フラグじゃないの!」


いきなり声を荒げた私に、女の子たちは後ずさった。


「これ精市にバレたら私だけじゃなくてあんた達も暫く学校来れなくなるよ!」
「どういう意味よ!」
「っと、とにかく!このことは誰にも言わないで!」

「なにが?」


その場の空気が下がったような気がした。頭上から聞こえる声はかなり聞き覚えがあるもので、女の子達は上を見上げて目を見開いている。ああ、嫌だ。見たくない!意を決してギ、ギ、ギと音がしそうな動きで上を見上げると。…デスヨネ。きれいな顔で微笑む彼氏様がいらっしゃいました。直ぐに我に帰った女の子達は慌てて走り去っていく。え!ずるい!


「お前はそこにいろ」
「…ハイ」


明らかに不機嫌だった。精市が窓から離れて直ぐに顔を覗かせたのは仁王君だった。すまん、幸村呼んだの俺。と申しわけなさそうに手を合わせる仁王にひらひらと手を振って、謝らないでと言っておいた。仁王の親切だもん。普通の行動だよ。そして、仁王君の顔がスッと窓の向こうに帰って行くと、ほぼ同じタイミングで精市が歩いてきた。


「せ、せーいち…?」


じりじりと迫り来る精市は私を壁際へと追い詰める。薄く弧を描いた唇や、笑ってるのに笑ってない目が、迫って、壁と精市のサンド。逃げ場は、無い。


「言いつけを守らないペットには躾しないとね」
「…ぅ」
「放課後、楽しみだなぁ」


ふふふと笑いながら、精市は私の首に噛みついた。キスマークなんて可愛いものじゃない。ガチな歯型がつくのだ。痛みに耐えるには精市にしがみつくしか無い。ピリッとした痛みの後からじんじんと脈打つような痛み。流石にそれは痛くて、痛くて、涙がこぼれた。


「いっ、いたいいたいいたいぃ!」


やっとこさ精市が口を離すと、唾液と血がまざったものが首から垂れた。ブラウスにつく前に精市はハンカチを取り出して押し付けた。やりすぎた、とか言いながら相変わらず、いや、さっきよりもっと不機嫌そうに私を見下ろした。


「お前がドMなのは知ってるけど、俺だって許せない事がある」
「ご、め…んなさい」
「名前を泣かせてるのも、殴るのも、俺だけでいい」


精市は、ドSだけど優しいから、呼び出される私を見て心を痛めていたのでは無いだろうか。私が罵られるのも、精市とつきあい始めてからだったし、自分が傷つきたくないからって目を背けて嬉しいって言う感情に変えていただけで。


「…私、精市が好きだもん」
「知ってる」
「精市と一緒に居られるなら、何でも大丈夫だもん。」


本当は、私は精市だけに罵られたいし、精市だけに痕をつけられたい。精市が良い。ぎゅうっと抱きついて薄っぺらい精市を締めた。それより強い力で精市に抱きしめられた。


「そんな事言っても、お仕置きはするからな」
「精市がくれるもの、全部嬉しいから良いもん」


そっとキスを強請るとじらすように頬に唇が触れた。




(噛まれた)(…誰に)(精市)




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