20000 | ナノ





優しい王子様のような甘い仮面で世間の女の子をだましているとはよく言ったものだが、確かに幸村精市はその通りの人物である。実際私もそのだまされた人の一人であって、今こうしてお付き合いをさせていただいている訳ですが…。優しくないとは言わないが、怒らせると本当に手のつけようの無い事になるのだ。普段温厚な分、怒ると怖いという考えは間違っていないらしい。
ま、そんな話は置いておいて、絶賛私はピンチです。おかしいな…今日は精市の家でなかよく宅呑みだったはずなのに。満面の笑みで私を組み敷いているこの男は何を考えているのですかね。私、今日のお酒を楽しみにしてきたのに。


「勃っちゃったからさ」
「や、知らないし」


上に乗っかっている精市を押し返しつつ、姿勢を立て直すと拗ねて頬を膨らませた。この感じだともう既に少々アルコールが入っているようである。さっきの怒ると怖い話同様、精市はお酒がはいると若干キャラ崩壊気味になるのだ。やけに子供っぽくなってみたり、すごい性欲旺盛になって盛ってみたり、あるときは泣き上戸、そしてあるときは普通に酔っているときもある。その日のコンディションによって変わるのは大変扱いにくいものだ。
で、今日は性欲プラス子供の日みたいで、さっきから私に口移しで酒を飲ませてくる。


「もうっ!精市!自分で飲めます」
「えーやだ」


そうしてまた自分の口に酒を含み、私に顔を近づけた。今回は量が多く、私の首を伝って零れた酒を精市の舌が絡めとった。ただ舐めるだけでなく、どこか性的なその行為に、私の気持ちも若干そっちよりになってきた。精市も敏感にそれを感じ取ったのか、ゆっくりと私を寝かせる。にまっと笑ったその顔は酔いなんて感じられず、まさかと思ったときには遅かった。今までのは全部演技で、私は精市の思う壺だったわけだ。


「やっと気分になった?」


なかなか許してくれないからどうしようかと思ってたんだ。と言われると、彼の策にまんまと嵌ってしまったと再認識してしまった。確かに一週間はしてないけど。だからって演技までしなくていいじゃないか


「ここでするのもいいけど、やっぱりベッドがいいよね」
「まぁ、はい」


軽々と私を抱き上げて寝室へ直行する精市の足取りはとても軽かった。くそう。
寝室のベッドに寝かされ、手際よく私の衣服を全部取り去ってから精市は私の上に落ち着いた。精市とのエッチは嫌いではないけれど、甘くしつこい前戯で疲れきってしまうから、体力勝負な所は解せない。


「前戯は短めでお願いします」
「え?その分いっぱいつい「言わなくて良いから。」


ちゃっちゃと終わらせてくれればいいの。と言うと、それじゃ俺がたのしくないだろと言い返された。普通は逆みたいだけど、私達の場合はこんな感じ。精市のほうが長いあいだ触れ合っていたいと言って、私は早く終わらせても構わない感じ。可愛げねーとか言われるかと思っていたが精市はそんなこと言わなかったから。


「ちょっとお酒入ってるから、感じやすいね」
「っ…いわなくて、いいっ…」


首筋や胸にあとを残しながら精市の唇が愛撫を繰り返す。何度もしてきた行為だけに、私の感じる場所を的確に抑えて攻めてくる。精市しか知らない体ではないから言える、精市はほんとに上手い。


「ぃ…〜っ、やっ、だ」
「嫌じゃないだろ」
「やぁ、あっあ、ゃ」


指だけで今日一回目の絶頂を迎えた。コレに舌が加わった時の快感を思い出して体が震えるが、今日はどうやらそれは無しの方向で事が進んだ。部屋着のスウェットの前をずらしてベッドサイドから避妊具をとり、口を使って封を切った。毎度の事ながら、この所作が一番妖艶で釘付けになってしまう。精市の長い、さっきまで私を愛撫していた指が猛りに指を這わせて避妊具を装着する一部始終をみつめた。


「そんなに見られると照れるんだけど?」


装着し終わると、直ぐにその先端を擦り付けてきた。ゆらゆらと揺れる腰の動きに比例してこすり合わせる強さも強くなる。まだ挿れてくれないのか、と視線だけで訴えるが、精市はたまにはいいだろと聞く耳をもってくれなかった。しかし、ただ擦り合わせるだけの行為でもかなりの快感があるのには変わりなかった。達するほどの快感は得られないが、常にゾクゾクと体に刺激がはしっていた。


「っ…〜、ん」
「息、吐いて」


毎度のことではあるが、精市は挿入の際に必ず私の体を気遣う。無理な体勢を強いるときはもちろんのこと、正常位でもだ。そんな優しさがとても嬉しい。こんなとき、一番精市の彼女でよかったなぁと思う。
私の上で体を揺らしている精市の頬に手を伸ばして、撫でた。そんな余裕あるんだ?と律動を激しくされてしまったが、それでもいい。私が精市のこと大好きだってわかってくれれば、それでいいんだ。


20000hit ゆい様へ


|

「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -