10000 | ナノ










子供は早めに作るに越したことないやろ?と眼鏡を外しながら、いけしゃあしゃあと言い放った侑士に言葉を失った午後11時50分。
そもそもの発端は昼休憩の電話だ。狙ったように掛けられてきた電話で、勿論相手は侑士だった訳ですが、夜、会いたいと言われて否と言う前に切られてしまったのである。仕方無く仕事帰りにそのまま侑士の家に来て、お泊まりなわけ。まぁ、侑士の家にも私の服とかなんやかんやが大体揃っているから不便ではないのだけど。風呂に入って髪を乾かしてから寝室へ向かうと、一足早くそこに居た侑士がサイドテーブルの引き出しを見つめていた。


「なにしてるの?」
「ん?…ああ、ゴムきれとってな」
「あ、ああ、そ。なら別にしなくても良いじゃん。溜まってる?」


前回身体を重ねたのは4日前くらいだったような。侑士の性欲はヤバいから溜まってるかもだけど。ちなみに、しなくていい、は避妊じゃなくて行為自体をしなくていい、だから、そこ重要。


「えー…」
「何、不満?」
「せやかて俺も健全な男児やし」
「でも子供デキたら困るのは侑士だよ?まだ院生なんだから」


侑士の隣に腰掛けて、なんとか諭そうと試みたが、侑士は一瞬考えた後、あっさり否定した。

そして今、ここである。


「まぁ、子供は早く作るに越したことはないやろ?今からやったら生まれるんは俺の卒業より後やし、大丈夫や」
「は、」


ゆ、ゆっくり眠れると思ったのに…!私の淡い期待返せ!後ろに倒され、組み敷かれ、まぁ、私、諦めは早い方だから。何回までOK?とパジャマを脱がしながら聞いてくる侑士に、一回もダメと言いたかったが、返す言葉もなく流してやった。だって言っても聞かないし。一回で出来る可能性なんて限りなくゼロに近いのに、私との将来考えてくれてるんだなとか思うと、なんだか照れる。


「っ、〜、侑士…」
「ん?」
「胸ばっかし…、っ」


あられもない姿になった私の、そんなに大きくもなければ皆無な訳でもない胸を、愛しむ侑士の髪を握った。侑士ってやっぱり変態なの?足とか胸とか、好きだし。侑士の行為中に好きな(というか、よくしてくる)事は、今みたいに音をたてながら胸を愛撫する他に、内股を甘噛みしたり足に舌這わせたりと何か普通じゃない。でも感じてしまう素直な私の体よ。


「おねだりしてぇや」
「っ…、…さ、…さわ…触って、っ」


[侑士side]

顔を真っ赤にして珍しく素直に言った名前に、ギリギリ合格と囁きかけて、でもまだ足りないので、追い討ち。


「どこに触ったらええ?」
「っ、」


鳩尾からツーッと指で体のラインをなぞりながら下へと下がれば、期待を含んだ瞳と視線が絡んだ。ここ?と既に湿り気を帯びた穴に指を少しだけ差し込んだ瞬間、眉を寄せて涙を浮かべた。いつもと同じ反応に、俺も反応してしまう。くぷ、と音をたて、指を浅く出し入れしながらもう一度尋ねた。


「名前、聞かせて?」
「も〜っ、きかな…っ――!」



ぐ、と指を根元まで押し込んだ瞬間、身体を反らしてシーツを握りしめた。いきなりすぎた快感に、体がびっくりしたのだろう。わざと音をたてながら指を増やしつつも抜き差しを繰り返すと、出来上がり。名前のすべてを知り尽くした俺にしかできない料理の仕方。


「責任は、絶対とる」
「…ん、」


ギシとベッドのスプリングが軋み、名前が体をよじった。ゆるりと首に回された腕をしっかり絡ませ、俺は背中と腰に手を添えた。引きつけるように体を密着させながら取り出した自身をつきたてた。


「ひあぁっ…」
「っ、…ちょっ、締めすぎ」
「んあ、ああぁ」


締め付けにも負けず、突き上げれば突き上げるほど締め付けが強くなっていく。少しぐらい緩めて欲しいところだ。しかも生となればゴム一枚だけであっても、避妊している時とは段違いに快感があるのだから。


「んっあ、ああっゆうしっ…そ、いやぁ」
「気持ちいいの間違いやろ?」
「おっ、くは…ああ、っひや…」


俺は、何度となく、名前を絶頂に導くのが好きだ。だからか、感じる所をやりたい放題に刺激するのも好きだし、持久力もあるからかネチネチと攻めてしまう。


「ゆうし、ゆしっ…だめ、っも…」
「イって」
「や、イく…あぁ、ああ…―っ」


背中に感じた痛みは、名前の爪のせいだ。だが悪い気はしない。達した名前をベッドに縫い付け自らも奥深くに熱を放った。ゆっくりと名前の目尻から流れた涙を親指の腹で拭ってやった。


「今日はこのままでええ?」
「…ん」


名前の了承を得たところで、繋がったまま寝転び、抜けないようにしっかり腰を引き寄せた。名前は小さく声を漏らしたが、俺の胸に頬を寄せ瞼を閉じた。明日も仕事だから早く眠りたいのだろうと止めはしなかったが、正直寂しい。名前が就職してから、ピロートークが少なくなってきているような気もしているし、これから先自分も就職すればもっと減るのかもしれないと言う事実に。


「侑士、」
「なん?」
「ごめんね、眠くて……話…あんまりできないかも」


俺がピロートークを大切にしている事を、名前は知っていたかのように謝った。


「構わんから、もうお休み」
「…うん」


これもれっきとしたピロートークかもしれないな。と感じながら名前を抱きしめ直し、俺も目を閉じた。



10000hit Lili様








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