Theotokos | ナノ








触れるだけのキスで真っ赤になったマリアの不意をつき、ソファーの背もたれを飛び越させるように抱き上げ、膝の上に座らせて、向かい合った。思ったより軽かった為か、少し勢いがついてしまいマリアがぎゅ、と目を瞑っていたのに少し萌えたのはここだけの話。


「びっ、くりしたー…」
「これくらいでビビッてんじゃねーよ」


俺の肩に手を置いてはぁ、とため息を吐いているマリアの頬をすくい上げて無理矢理唇を奪った。離れないように後頭部に回した片手と、反対側の手はするすると下へ這わせた。なんとまあ、狙ったかのように脱がしやすいワンピースを着ていた為、たやすく衣服の下へ侵入出来てしまった。


「んん…っ、う…んぁ」


マリアは、分泌液まで甘いと聞いていたが、まさかここまでとは思っていなかった。砂糖菓子にも似たような甘い唾液。あまり甘味には興味は無いが、今まで口にしたどんなスイーツより旨く感じた。


「…ぁ、あとべ、さ、」
「なんだ?」


まだ小ぶりな膨らみを手に収め、首に舌を這わせながらもマリアの言葉に耳を傾けた。


「や、っぐ」
「ククッ…聞こえないな」


くちゃ、とマリアの口を封じるために押し込んだ指を動かすと音がした。舌を指に絡めて弄んでいれば、マリアの口端からこぼれ落ちる唾液。舌先でそれを舐めとると、やはり甘かった。


「お前は甘いよ」
「んっ、んんっ…ひゃ」


指を引き抜く代わりに、再び舌を絡めた。勿論マリア自身の唾液で濡れている指は下腹部の穴へ向かう。下着の脇から一本ずつ埋めてマリアの反応を見た。幸村が使っている割に中はキツく、しかも反応も初々しく異物を押し返すかのように収縮を繰り返す。


「んーっ、ん゛、…っ、っ」


バラバラと動かすだけでマリアの体は水を失った魚のように跳ねる。激しくすればするほど良い反応を示す体は、もう、幸村に侵されていると言っても良いだろう。嫌がれば嫌がるほど感じる体なんて、そうそう居ない。
塞いだままの唇から零れる甘い声はすべて俺の唇に飲み込まれた。今声を聞いてしまえば抑えが利かなくなるのはわかりきった事だ。


「ん゛、んん…っんゃ、あっ」
「…射れるぞ」
「っ―――ああっ!!」
「…締めすぎ、なんだよ…!」


イヤイヤと俺にしがみつきながら首を振るマリアの白いうなじが目前にある。本能的に牙を埋めたいと思うのは当たり前だった。


「だめっ、…っあ、激しっ!」
「勝手にっ、イくんじゃねーぞ」
「っん、あっ…やあっ」


華奢な腕の癖に、ワイシャツの上からでも爪が立っているのが分かった。こんなに華奢な腕してるくせに。


「や、跡部さんっ…そこ、やぁ」


今にも絶頂へ達してしまいそうなのが接合部から俺に伝わってくる。後少しで確実にイってしまうのは目に見えている。さら、とマリアの肩に掛かる髪を一方へ寄せ、片方の首を晒した。


「マリア、イけよ」
「マリア、て…呼ばない、でえっ」
「…イブ」
「!っ――――」


マリア、いや、イブが達するのとほぼ同じタイミングでイブの白い項に牙をたてた。声にならない声を漏らしながら、イブは俺の頭を抱きかかえた。膣内は更に締め付けを増し、まるで俺の精液を搾り取るかのようだった。


「っ、〜!ぁ、あ」


口の中に広がる味は、今まで味わったことの無いような程甘美で、気がつけば夢中で貪っていた。


「だ、め、」


吸いすぎている事にイブが言うまで気づかなかった。唇を離した場所には、白い肌によく映える赤が。くた、と体の力が抜けたイブは俺に倒れかかったまま、ゆっくりと眠りに落ちていった。
後始末をしている最中に仁王が現れた。何時もと変わらず、心を読みにくい表情をしていた。


「イブならまだ起きねぇと思うぜ」
「わかっとるよ」
「…」
「部屋までつれて帰る為に来たんじゃよ。多分朝まで起きん」


身なりを整えたイブを仁王に渡した。意識が無いはずのイブの手が、仁王のシャツを握り締めた。又、仁王も僅かに目を細めてイブの寝顔を見下ろした。この二人には何かある、と本能で理解した。それが何なのかは分からない。でも何かが、俺とは違う。


「帰るんか?」
「…ああ。明日も会議が入ってるからな」
「ご苦労な事で」


不思議と嫌みには聞こえなかった。わざわざ人間界まで働きに出掛けると言うことが仁王にはできないことだし、その言葉には羨望も含まれていたのだろうが。


「明日、プレゼントをイブ宛てに持ってこさせる」
「プリッ」
「じゃあな」


最後にイブの頬を優しく撫でて部屋にあった鏡に片手を突っ込み、自らの屋敷への帰路を作った。



****************



"イブちゃん、僕―――"


また、大事な所が分からない夢。私が慕っていたお兄さん。確かに会ったことがあるのに、相変わらず顔に靄がかかって思い出せない。前に見た夢の男の子と同一人物。男の子にしては高い声。私より年上で優しくて、だから私は彼が好きだったのかもしれない。


"イブちゃん"
"はるくん!"


ああ、そうだ。はる君の言う明日は私達には来なかったんだ。しかも気が付けば、彼の存在すら、覚えて居なかった。最近になって夢に見る事で思い出したのだ。


"―――!"


確かに私を抱き上げた優しい腕は、顔も名前も思い出せない彼。嗚呼、あなたは誰。





「はる、くん…」






イブの部屋で、静かに彼女が目覚めるのを待ちながら窓の外を見ていた時だった、イブが小さく呟いた名前は懐かしいものだった。ギシとベッドのスプリングを軋ませて腰掛けても、イブの目は開く気配がない。


「イブちゃん…俺、待っとるよ…ずっと」


前髪をよけて額にキスをした。頬に手を添えながらさらに唇を重ね、首もとに顔をうずめた。その暖かさが心地良すぎた。





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