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Melty Boy




朝目覚めたら、キスされてました。いやいやいや、アナタ昨夜凄く盛ってましたよね!と罵倒したかったが、息すらままならない状態なう。


「っ、ふぅ、…ゃ」
「やっとお目覚めですか」
「朝から、なによぉ…」
「何時までも寝ている名前が悪いのでは?」
「永四朗が寝かせてくれなかったからでしょぉ〜」


それに休みの日ぐらい寝かせてよ、と隣で寝そべる永四朗の胸に顔をうずめた。相変わらず無駄な肉がない良い体してるわぁ…と感心していると、窒息しそうなぐらい抱き締められた。何が気に入らなかったんだ。


「そんな可愛い事言ってると、襲いますよ」
「ふらーぁ」
「馬鹿とは何ですか。」
「朝からそんな体力ないし」


永四朗の腕枕と、頭ナデナデ攻撃に、私はまた夢の世界へ旅立とうとしていた。私にはこんな優しい(のか?)永四朗だが、中高としていたらしいテニスでは殺し屋と異名があったんだとか。因みに甲斐君情報。良いなぁ私も殺し屋な永四朗見たかったなぁとボヤいた覚えがあるが、その時の私は永四朗が本気になったら死ぬと学習した。勿論墓場はベットだ。


「まだ寝るんですか」
「私は永四朗の半分以下の体力しかないんですぅ」
「ではその体力を総動員して、昨夜喘いでいたんですね」
「…ちょ、オブラートに包んで…」


なんでまぁ、こんなにカッコイいのに朝から卑猥な言葉を吐くわ吐くわ。でも男子ってこんなもんなんだろうね。私は永四朗が初めてだからよくわからないけど。


「そんなことはどうでも良いんですが」
「なに?」
「朝食が冷えますね。名前の好きなあれですが」「本当っ!!それをもっと早く教えてよね!食べよう、永四朗!」


すでに私が目をさましてから15分はゆうに経っていた。因みに私の好きなあれとは、永四朗オリジナルのフレンチトースト。初めて作って貰った時から私のお気に入りで、お泊まりの度に作ってくれる。ここだけの話、私より永四朗の方が料理上手なんだよね。


「暖め直します。テレビでも見ていなさい」
「やだ、永四朗と居る」


冷めたトーストをフライパンで暖め直す永四朗の背中に抱きついた。動きにくいだろうに、何にも言わずに作業を続けるのが永四朗らしい。


「今日はどこか行かないの?」
「…どこか行きたいところでも?」
「特に無いけどー聞いただけ」


それに、明日も仕事だから遠出して永四朗を疲れさせる訳にはいかないし。いくら底無しの体力を持ってる永四朗でも、疲れる時はつかれるんだから。


「名前」
「ん?」
「本屋に行きましょう」
「本買うの?珍しいね」
「後で話たいこともあります」


別れ話以外なら聞いてあげるーと軽く返事をしたら、肘でどつかれた。ちょ、何気に強いし!
温まったトーストを皿に盛り付けた奴を運んだ。さすがに配膳ぐらいはできるよ。


「おーいしぃっ!!」
「それは良かった」
「ねーレシピ教えてよ」
「嫌ですね。」
「なんでよ」


机の下では足と足の攻防が繰り広げられている。だって、レシピをかれこれ二年は聞き続けてるけど、毎回拒否されるんだもの。私だって作ってあげたいじゃん。


「名前には俺が作ります」
「え、」
「だから、一生作れなくて結構」


頭のなかで今の言葉を整理、なう。口は相変わらず元気に咀嚼しているが、脳はアウェーだ。あんまり私賢くないからさ、なかなか理解するまでに時間が必要なんだよね。つまり、あれか。一生食わせてやるよ!的な!!


「なんか、プロポーズみたいだね」
「それを前提に言ったんですがね」
「……………?え、」
「不満でも?」


いや、あの、なんて?今なんて言ったの。


「だから、結婚しませんか」
「あ、え…?」
「返事はイエスしか用意してませんので。お得な物件ですよ?一生甘やかせてあげます」


永四朗は、私がこんがらがってる事に気づいてる癖にとんとん拍子で話を続ける。しばらくして私がようやく発した"私でいいの"にも、何か不満でも?と返した。


「結婚情報誌を買いに、本屋へ行くんですよ」
「子供は三人欲しいです」

全く会話のキャッチボールが出来ていないが、私の子供は三人発言に、永四朗は満足げに笑った。


「ではプレゼントです。左手を出しなさい」
「はいっ」
「これは、必要なくなりましたね」


以前一緒に買ったペアリングを名残惜しそうに指から抜かれた。その寂しさは、次にはめられた新しいリングによって埋め合わせられ、キラキラと光るそれを、私はキラキラした目で見つめた。


「これでやっと、永四朗が私の物になった!」
「それはこちらのセリフです。ああ、子供が出来たら早急に仕事はやめなさいよ」
「はいはーい」


ぱしゃっと携帯で、指輪を写メって仲のいいみんなに一斉送信。本文には何も書かないで、画像だけ送ったにも関わらず、みんな口をそろえておめでとうと返してくれた。


「はははっ」
「なんです?」
「見て、お母さんからのメール」

"お父さんが永四朗君に会いたがってます。あ、お母さんもね!あんたは帰って来なくても良いけど永四朗君だけでも帰ってらっしゃい"


私<<永四朗。な、家の親。ま、まぁ面白いからいいけどね!てか、彼女の家に単身で乗り込むような彼氏が何処にいるのよ。大体沖縄からだったら海渡らなきゃ駄目なんだからねー?


「相変わらずですね」
「まぁね、相変わらず変でしょ」
「毛嫌いされるよりましですね」
「変なのは否定なしか」


私が最後の一口を食べたら、永四朗がそれを下げる。いつもの事なんだけど、ね。結婚しても続くんだろうか、でも永四朗だから続くよね。


「とりあえずさ、不束者ですがよろしくお願いします」
「名前を貰ってくれるのは俺だけですからね」


否定する言葉が見あたらなかったのは言うまでもない。



5000hit 紫水様






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