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ハローBabyU






仕事中は極力名前や澪の事を考えすぎないように心がけている。何故なら、二人の事を考えると破顔してしまいそうになるからだ。でも、写真をデスクマットに挟んでいたり、フォトスタンドに飾っているあたり、周りから見ればリア充なんだろうな。この年で既に子供が居ると知った上司や同僚には驚かれるが、名前を誉められるのは嫌じゃない。名前は誰が見たって綺麗で、可愛い、俺の、妻なんだから。澪ももうすぐ1歳だし、そう言えば澪の誕生日には何をプレゼントしてやろうか。以前テニスボールをまじまじと見つめ、1人でボールと遊んでいた澪を目撃した。テニスボールでいいか。他にも何か買ってやればいいだろう。それより、今気になるのは名前の体調だ。俺に隠していたが、どうやらあまり良くないみたいで。何となく心当たりはあるがまだ確実性がない。
朝、名前が俺より早く起きる様になってから基礎体温の把握もうやむやだからだ。色々と考えを巡らせていると、昼休みになっていた


「跡部、お昼食べに行かないのかい?」
「ああ、行きます」


勿論会話は日本語ではない。こっちの人は日本人とは違って結構打ち解けた人が多い気がする。勿論、本社だけあって日本人も数人は居るが。今日はとりわけ名前が朝から具合が悪そうで、弁当を作れる状況じゃなかったので、先程の友人とランチに向かう事になっていた。先に出た彼を追うように俺も会社から出た。


**************


朝から、というかここ一週間ぐらい気持ち悪い。熱を計っても平熱だし、気持ち悪い以外何も異常がないから、景吾に心配もかけたくないしあまり顔には出さないように頑張ってたんだけど、やっぱり景吾は気づいていたみたいだ。今朝は朝食も弁当も作らなくて良いと言ってくれた。
景吾が家を出てからしばらくして、澪が起き始めた。私の横で寝ていた澪が、寝返りを打ち、はいはいをして私の頬に手を置いた。


「んま!」


目が醒めちゃったかーと微笑みかけると、澪も笑った。


「じゃあ、ご飯にしようかな」


ベットから起き上がって澪を抱き、キッチンへ向かうと、テーブルの上には私のと澪の朝食が既に用意されていた。景吾だ。朝食と一緒に置かれたメモには"早めに帰る"とだけ残されていた。景吾の、この優しさだけで私は元気になれるような気もする。だから、景吾に良い報告ができるといいな。


「二人目、かぁ」


居たら、いいな。私に似るかな?でも景吾に似た男の子なら絶対イケメンになるんだろうなぁ…。澪の時にはこんなワクワク感が無かったからか、なんだか嬉しい。あ、でも産婦人科行く前に市販の検査薬で調べてみようか。そう思って買いに行ったのが昼。


結果、陽性。
検査薬と取り扱い説明の紙を握りしめて、何度も見直した。がっつり陽性。こ、これが、俗に言う、わくてかって奴ね…!そんなこんなで病院に予約の電話をしたのが昼過ぎ。


「ご懐妊ですねー」


英語で言われると、なんか緊張。でも、やっぱり外国人って表現力豊かというか。検査が終わった後に担当医とハグ。したのが夕方だった。



***********



居ない。家に。早めに仕事を終わらせて帰ったとしたってもう夕方。しかも携帯を家に忘れて行っているため、連絡がつかない。澪も勿論居ない。誘拐とかも…無いとは言い切れない。そわそわ、そわそわと自分でも分かるくらい落ち着かない。探しに行くか、でも何処へ?行き先を伝えてから行けとも言っていなかったし、仕方ない。とりあえず手当たり次第に探してみようと、玄関へ向かおうとした時だ。そこが開く音がした


「…景吾?帰ってるの?」


玄関に澪をおろした名前を腕の中に収める。床に下ろされた澪はと言えば自ら家の奥へ進んでいる。


「景吾?」
「心配した。」
「今日は早かったね」
「何処へ行ってたんだ?」
「…あの、ね。産婦人科…」


ぎゅ、と俺の首に手を回し、耳元で名前は囁いた。赤ちゃん出来てたよ、と。ああ、やっぱり。俺の予感は当たっていた。


「やったな」
「うんっ」


その後、俺が実家から1人使用人をイギリスに呼んで、名前がむちゃをしないように監視させたのは言うまでもない。




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