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ハローBabyT





シャーペンと紙を机に置いてボーっとしているように見えるかもしれないが、ちゃんと考えてます。男の子用の名前と、女の子用の名前を考えているが、なかなか思い浮かばない。既に10個ぐらいは思い付いたが、こればっかりは景吾と話し合って決めたい。この間忍足君達が遊びに来た時、みんなが考えた名前。"のあ""みお""りく""ひかる"等々。どっちでも大丈夫な名前ばっかりだった。私が性別を聞かなかったから。やっぱり産んでからのお楽しみかなって思ったから。


「名前様。夕食のお時間です」
「はぁい」


執事が私にご飯を知らせに来たが、今日は景吾が遅いらしいので、いつもとは違って部屋に運んで貰った。それに景吾の両親もこの間から海外へ行ってしまったから独りだし。でもさすがにここの机の上にご飯を運んでもらうには少し悪いので、机を移動しようと立った。


「ん?」
「どうかされましたか?」
「んー、なんかお腹張ってる…」
「…畏まりました。」


一瞬目を見開いた彼は私に、朝方には入院になる可能性があると言った。とりあえず食事と睡眠をいつも通りにとってかまわないらしい。こんなときでも執事は表情を崩さない。ただの執事じゃなくて、本当はロボットじゃないのかなとたまに思う。本人には口が裂けてもいえないけどね。
しかもベットに入ってしまえばすぐに眠気に襲われ、眠ってしまったので、目が覚めた時には朝だった。目覚めて一番に感じたのは痛みで、景吾の腕の中で不安におそわれた。


「景吾っ、」
「…ん、あぁ、起きたのか」
「やばい、めちゃ、痛いん、だけど、っ」


景吾は、少し眉を下げながら私の頭を撫でた。周期が早まれば病院に向かうとか。なんでそんな冷静なの…!私、なんかパァァァンってなりそうなんだよ。
でも、確かに悶絶するような激痛は周期的に来ている。痛みが引いた瞬間に移動。景吾が抱えてくれようとしたけど拒否した。


「まだ、大丈夫だから」
「…」
「…なんで不満そう、なの」
「俺は、何もする事ねぇな、と」


つまり、景吾は拗ねているらしい。


「ん、と、じゃあ、手、握ってて?」
「ああ」


少し顔が綻んで、景吾は私の手を握った。あれ、こんなキャラだったっけか?まぁ、いいけど。こんなふうに呑気にしてられるときはよかった。病院につくころには景吾に抱えてもらっていたのだから。


「…なんでテメェが居るんだ」
「ええやん。研修生やとでも思っといてくれたら幸いや」


何故か忍足君が忍足君のお姉さんと待っていた。お姉さんが子宮口を確認したりしているのに二人はお構いなしに突っ立っている。景吾は私の汗を拭ってくれたりしているけれど。忍足君、何のためにいるの。


「そろそろ移動しましょう。痛みが引いたら動くわよ」
「っは、い」


動くと言ったって私が起き上がる前に景吾が抱きかかえてくれたから、全然関係なかったんだけど。


「頑張れよ」
「うん」
「俺はここにいる」
「、ん」


痛い、早く出て!!と叫びたい。景吾に握りしめて貰っている手は既に汗びっしょり。力むのを繰り返し、何度目かのそれをしたとき、ずるりと一気に出た。呼吸が楽になり、自然と涙が流れた。


「おめでとうございます!元気な女の子ですよ」
「っ、よか、よかった」


景吾も、嬉しそうに笑っている。顔中にキスの雨を降らせるのは少し恥ずかしかったけど、景吾が祝福してくれて良かった。


「宇宙人みたいだな」


看護婦さんから子どもを受け取って、景吾が一言感想を述べた。景吾に子どもは似合わないなと思ったのはここだけの話。寝たままの私の顔のそばに、子どもみ近づけた。小さい手が、うごうごして、目はまだしっかり開いていない。産んだんだ、と改めて実感した。


「澪」
「?」
「名前、考えてたんだろ?昨日の夜見たんだ」


私が書き出していた名前の中から景吾がチョイスしたのは澪だった。まぁ、それを考えたのは皆なんだけどね。でも、いいや。景吾が選んでくれた、それだけで私もこの子も満足だと思うから。後産も終わって、病室へ向かう間も景吾は澪を離さなかった。まだ何も分かっていない澪に、パパだぞーなんて話しかけている景吾がどうしようもなく愛おしかった。


「澪…澪、か。」
「跡部澪。いい名前だ」


ベットの上に寝かされたが、どうにも眠る気になれなくて座った私のそば、ベットに景吾が腰を下ろした。生まれる前にふたりで子育て講習なるものを受けていたので、まったく違和感はない。特に景吾はなんでも習得するのが早かったし、完璧だから。私も抱きたいなぁと見ていたら、それに気づいた景吾が私に抱かせてくれた。痛いの我慢して生んでよかった。にへらぁと笑うと、景吾も嬉しそうに微笑んだ。チュッと触れるだけのキス。そのままの距離で見詰め合って笑いあう。


「大好き」
「俺は愛してる」
「…知ってるよ」
「だろうな」


その後すぐに、景吾が早く二人目がほしいと呟いたのを私は聞き逃さなかった。








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