03
結局俺は朝を迎えるまで、ここの家主だと言うなまえちゃんを見張っていた訳だが・・・
「全然起きる気配ないじゃないのー」
未来人(否、異世界人か?)は、こんなにも起きるのが遅いだなんて驚いた。こんなんじゃ不健康真っしぐらじゃないか。
そんな俺の心配も露知らず、彼女は延々と眠りこける。窮屈な屋根裏から少し大袈裟に音を立てながら部屋へと降りても、一向に起きる様子を見せない。
起きてー、とぺちぺち頬と叩くとやっと、うーん、と身じろいだ。
「んー、あとごふんだけ・・・」
むにゃむにゃと何か呟いた後、また布団に潜り込んだ。あーもう世話が焼けるんだから。
なんだか呼吸が苦しくて、目を覚ます。ゆっくりと瞼を持ち上げると、そこには猿飛の笑顔が広がっている。
「やーっと起きたね、おはよ」
「んん、なに、さすけ・・・?」
「っ!!なまえちゃん、今、俺様の名前・・・!」
寝起きで頭が回らない私を他所に、猿飛は一人で盛り上がっていた。しかしこいつは何故馬乗りしているんだ早く退かないか苦しいのだ。ギブギブとでも言うように、猿飛の膝を叩けば、ようやっと楽になる呼吸。
「おはよう、猿飛」
大きな欠伸を一つ、それから大きく伸びをして起き上がる。一階から真田の声が聞こえてくるあたり、皆はもう起きているのだろう。
「なんだ、夢じゃないのか」
「それはこっちの台詞だよ」
同時に溜息を吐いて、驚いて顔を見合わせた。その後二人して小さく笑った。
「ふふ、猿飛もっと怖い人かと思った」
「アハー、俺様もなまえちゃんの事、疑いすぎてたかも」
ある程度打ち解けた私達は、一緒にリビングへと向かった。
リビングで待ち構えていたのは、椅子に座って寛ぐ伊達主従と、庭先で騒ぐ真田と前田だった。(ちなみに、リビングのすぐ外に庭が面してしる。)
「うぉぉお!!親方様ぁぁあああ!!!」
「いいねえ幸村、熱いねえ!」
「伊達、片倉、おはよう。早速だけど、あれなに」
ゆったりとお茶を飲んでる二人に問えば、知らない、と返ってきた。そりゃ、あんなに煩くしてる真田なんて知りたくもないか。
「真田、ご近所迷惑だからやめて」
「はっ!なまえ殿!おはよう御座いまする!!」
「猿飛、あとは頼んだ」
もう一向に黙りそうにないので、後は猿飛に押し付けた。前田は私の雰囲気を察したのか何なのか、すぐにリビングに返ってきた。
「なまえちゃん、おはよう」
「前田、明日から朝は静かにお願いね」
そう言うと、あいよ、と返ってくる。本当に分かっているのだろうか、全く持って不明だ。
とりあえず朝ご飯になりそうな物を探す。すると乾燥パスタと缶詰入りのミートソースを見付けた。朝っぱらからすこし重すぎるかしら、なんて思ったが非常事態なので仕方ない。
皆がテレビを見ている間に(家電製品の説明は、昨日の内にある程度済ませてある)、私はパスタ作りに励んだ。人の為に何かを作るなんて久しぶりだが、茹でて和えるだけなので、失敗はあり得ないだろう。
途中、猿飛が覗きにきた。恐らく毒が仕込まれていないかのチェックだと思う。
「毒味、してみる?」
「ん、そうさせてもらうよ」
猿飛達の言葉で言う"南蛮"料理だが、果たして口に合うだろうか・・・。
「へえ、これが南蛮料理かあ。結構美味しいんじゃないの」
口に合うようで良かった。これをお皿に取り分けてテーブルへ運ぶと、テレビに食いついていた真田と前田がすっ飛んで来た。
「猿飛の毒味済み。お口に合うかは不明だけど、今日の朝ごはんです」
「良い香りがしまする」
そして皆が麺を啜る。一応フォークの使い方とパスタの食べ方の説明はしたのだけれど・・・。唯一片倉だけは、フォークを使いこなしてくれている。まあいいか、と私もパスタを口に含んだ。
さあて、お買い物にでも行きますかね。
03食卓
(Delicious! )
(まっこと、美味で御座りまする!)
(南蛮料理って美味いんだねえ)
(野菜が入ってねえじゃねえか・・・!)
−−−
佐助に起こされるのは定番。
カナメ