05






「とまあ、そんな感じだ」

「説明ご苦労様、伊達」


新たにやって来た瀬戸内の二人の為に態々もう一度説明するのが面倒な私は、全て伊達に丸投げした。勿論、途中で言葉に詰まった時には助言くらいしてあげたよ。


「そんな訳だから、武器を寄越しなさい」


そう言えば長曾我部はすんなりと武器を差し出してくれた。大事に扱ってくれよ、なんて言われる始末だ。大事にするに決まってんだろ。
しかしここにも聞き分けの良い子がいるとは。眼帯してると聞き分けが良くなるのかしら?


「ほら、毛利もその"とっても素敵"な兜や鎧を脱いで下さい」

「・・・チッ、仕方あるまい」


どうせ何を言っても聞かぬのだろう、と持っていた輪刀・兜・鎧を渡してくれた。よし、毛利の扱いはこれでマスターしたぞ。後ろから感嘆の声と拍手が聞こえたのは気のせいではないだろう。

かくして、毛利と長曾我部を迎え入れた。




「それじゃ、皆言いたい事とかあるだろうけど、まずはご飯にしよう」

「なまえ殿!某、この時をお待ち申しておりました!!」

「はーい旦那は落ち着こうねー」


夕飯は、殆どを猿飛と片倉に押し付けた。しかし、食べたい物はしっかりとリクエストしておくのは忘れない。

リビングのテーブルに並んだのは、白飯と味噌汁、それに天ぷらだ。戦国時代の人は天ぷらの事を"精進揚げ"と言っていたのを思い出し、リクエストしてみた。
天ぷらは、さつま芋や茄子から始まり、春菊や蕨などの山菜、更には海老や烏賊、鱚まである。


「揚げ物とか久しぶりー」


いただきます、と手を合わせると、皆の視線がこちらに集まった。そう言えば、昔は"いただきます"と"ごちそうさまでした"の習慣が無いんだったと思い出す。それぞれの意味を説明してやった。


「それでは皆さんご一緒に、いただきます」


まるで保育士さんが幼児達に促すように、ゆっくりと大袈裟に号令した。私の後には七人分のいただきますが響いた。


ご飯を食べ終わり、今度はお風呂が待ち構えている。昨日はバタバタしてお風呂に入れなかったので、身体が凄く気持ち悪い。早くお風呂に入りたいところだが、私は一番最後かな・・・。
一々説明するのが面倒なので、伝言ゲーム形式でやってもらう事にした。


「じゃあ一番風呂は伊達に決定ねー」

「おいなまえ、」

「オーケー、片倉も一緒においで」


風呂場まで案内し、伊達の服を脱がしにかかると片倉に全力で止められた。ここは俺が、なんて言っている所を見ると、やっぱり未だ完全には信用されていないんだなあと思った。



「Ah きもちいい」


そして現在、伊達にシャンプーを体験してもらっているところである。勿論、私と片倉は服を着たままだ。
コンディショナーとボディソープの説明もついでにした後、私はそそくさと風呂場を後にした。片倉が出てこないところを見ると、この後は片倉が身体を洗ってやるのだろうか・・・。

邪な事を考えている内に、伊達主従がリビングへ戻ってきた。今度は真田主従がお風呂に入っている。


「伊達、Come on! 」


伊達を前に座らせ、ドライヤーをかけてやる。リビングにいた奴ら全員がドライヤーの音に驚いていた。しめしめ、皆の驚き顏が見れたぞ。


「Ah これもきもちいいな」

「現代は気持ちのいいことばっかりだよ」


そう言ったや否や、伊達が凄い勢いで180度回転して詰め寄ってきた。この時、片倉と目が合ったがすぐに逸らされたのを私はずっと忘れないであろう(片倉め、覚えてろよ)。


「I don't accept that you sleep tonight. 」(今夜は寝かせないぜ?)

「Don't say a foolish thing. 」(馬鹿言わないでよね)

「Ha! 連れない女だぜ」


片倉に見えないように腕を軽く抓ってやったら、伊達は肩をすぼめてテレビの前へ移動した。

その後も伝言ゲームは続いていく。真田主従→前田→瀬戸内もお風呂を済ませ、全員にドライヤーもかけてあげた。
しかし問題なのは、さっきから姿が見えない風魔である。思い返せばご飯の時もいなかった。


「風魔ー、おいでー」


いつぞやのように"おいで"をすると、黒い影が降ってきた。よしよしと頭を撫でると、くすぐったそうにその身を捩る。


「風魔、お風呂入らないの?」


フルフルと頭を振るところを見ると、水が嫌いなのだと伺えた。お前は猫か。

私はズルズルと黒猫、もとい風魔を脱衣所まで連れていく。その間もイヤイヤと抵抗する風魔。なんとなくだが、風魔とは意識の疎通ができるようになった。








「どうしてこうなった」


私は今、広めの浴槽に浸かっている。風魔と。
風魔を"ご主人様の命令"で無理矢理脱がし、風呂場に入れたまではいい。その後、風魔の必死の抵抗で、何故か私も脱がされて今に至る。
別に私の裸体が見られる事ならどうってことないのだ、問題はそこじゃない。なぜ同じ湯船に浸かっているのか。しかも、先刻には頭や身体を洗われてしまった。なにかがおかしい絶対に。


「ねえ風魔、あんた以外にむっつり?」


少し頬の赤くなった風魔に問えば、ハッとした後にフルフルと首を振った。
そしてその後、口パクで何かを伝えてきた。読唇術なんて始めてだが、意外と分かるものだった。


「≪主、小太郎とお呼び下さい≫」

「なに?名前で?じゃあ小太郎、あんたも楽に話していいよ」

「≪いいえ、主に対し楽に話すなんて出来ません≫」

「じゃあ命令、これからは楽に話すこと。ついでに名前も呼び捨てね」


そんなこんなで、小太郎と仲良くなった。
お互いに名前で呼び合いながら(と言っても、小太郎は言葉を発していないが)リビングに帰ってきた私たちを見て、他の七人に質問責めされたのは言うまでもない。




苦労は増えたが、笑顔も増えたな、なんてね。




05親しむ
(ちょっと風魔、俺様を差し置いてどういうこと?)
(≪フン、貴様になまえは触れさせない≫)
(むかつくんですけどー!)



−−−
逆ハーは大好物です。

カナメ




「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -