04




宴はあっという間に終わった。武田信玄が、今宵は無礼講だ!なんて言うから、兵士の人達は大盛り上がりだし、幸村は酔っ払って殴り愛し始めちゃうし、慶次は見知らぬ兵士と飲み比べしちゃうし・・・。あれ、この宴って私と慶次が主役なんじゃないの?自惚れてただけなの?


「はあ、どいつもこいつも、」

「ほんとだよねー、これ片付ける身にもなってほしいよ」


ギョッとした。背後から急に話しかけるなよ、猿!オカン!お前なんか世のオタクなお姉さん達からオカンとか呼ばれてるんだからな!と心の中で散々悪態をつく。


「なーんか、むかつく」


猿飛はチャキっと苦無を構えて見せた。心の中が読まれたかと思って一瞬だけ焦ってしまったが、どうやら違ったようで、あーめんどくさい、と呟きながら幸村をほんの少し怪訝そうに見つめた。


実は、信玄公や幸村、慶次には私の事を粗方話してしまった。未来の様で未来ではない世界から来た事。目的は無く、しかし未だ帰れないという事。
話せば信玄公は、暫く此処で暮らさないかと提案して下さった。その代わり、身分等気にせず接してほしい、未来の事を沢山話してほしい、とも。
なのでお互い敬語は無しにして、信玄公、幸村とお呼びする事になったのだ。
話した理由は特にないけど、矢張り信玄公に嘘はつきたくないのと、純粋な幸村を騙すのは気が引けるから、って事にしておく。


「俺様、あんたの事微塵も信じてないから。第一未来なんて言われて信じれる訳ないでしょ?大将も真田の旦那もどうかしてるよ」

「さいですか、私も猿飛さん怖いので、お互い近付かないって事でいいんじゃないですか?」


半ば投げやりにそう答えた。猿飛佐助と話せなくなるのは悔しい。でも折角この世界に来たのに嫌われるなんて勿体無いけど、仕方のない事だよね。自分にそう言い聞かせる。何より彼は疑うのが仕事だから。


「ねえ、俺様あんたに名前教えたっけ」


ぬ か っ た !!
確かに回りは佐助と呼べど、猿飛とは呼んでない!まずい、もう回避できない・・・。
殺される、そんな言葉が脳裏に過ぎった。


「まだ詳しくは聞かないでおいてあげるよ。明日あんたの部屋へ行くから覚悟しておいてね」


つまりはそういう事だろうか。覚悟ってなに、拷問?嘘でしょ?拷問とか無理無理無理私これでも加虐性欲は少なからず有れど、被虐性欲はこれっぽっちもありません!ありえない!
しかも明日とか言ってるけど、絶対に今晩中は私の部屋の天井に居るつもりだよ!逃げたりしたら殺すってかこのやろおおお


「ふう、とりあえず落ち着こう。なるようになるさ、明日が楽しみだ・・・」


客間へ戻って布団に潜り込んで、ふふふと空笑いを決め込んで、眠りに落ちた。




04.ばれてしまいました。
((彼女は何を企んでいるんだ?))
(佐助え、俺の酒はまだかあ!)
(ああもう、はいはい旦那、今行くよー)




カナメ



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