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昨晩早めに寝たお陰か、朝早く目が覚めた。
客間前にある井戸で顔を洗ったあと、髪に軽く櫛を通し、城の裏側へと向かった。


一面に見えるのは葱や牛蒡、それから白菜など様々な野菜たち。端の方には、茄子や枝豆なども見える。


「いやはや、こんなに大規模だとは思わなかった・・・」

「なんだ、早ぇじゃねえかなまえ」

「うわっ、こここ小十郎さん!お、おはようございます!」


驚かせちまったか、と小さく笑った。いやいや突然後ろから色っぽいバリトンボイスが響けば誰だって驚くでしょう。っていうか、今、わわわら、笑った!小十郎さんが笑った!
余りにも男前で眩しすぎるそれにワナワナしていると、どうしたんだ早く付いてこい、と促された。はい、何処までも付いて行きます!

案内された其処は、土で造られた蔵のような所で、様々な野菜が貯蔵してあった。


「政宗様が興味を持たれた野菜を片っ端から集めたんだ。南蛮や珍しい種の野菜なんかがある」

「あ、これ南瓜だ!それに馬鈴薯まで!」


端の方には玉葱らしき野菜も見えたが、この時代の玉葱は恐らく観賞用だったはずだ。それまで揃えてあるなんて、恐ろしや、小十郎畑。


「随分詳しいじゃねえか、調理法なんかも分かるのか?」

「勿論です、私がいた所ではよく食卓に出てきていましたよ」

「こいつ・・・何処かの姫か?」


小十郎さんが何か言っていたが、よく聞こえなかったのでスルーだ。
しかし馬鈴薯と玉葱があるならカレーやシチューなんかも食べられるんじゃないかな。おっと涎が。
スパイスは流石にないと思うからカレーは無理そうだけど、牛乳があればクリームシチューくらいならイケるかもしれない。


「南瓜や馬鈴薯があるなら、南蛮のシチューという食べ物などが作れますよ」

「しちう?そこはかとなく旨そうな名前だな」


もちろんなくても作れるけど、あった方が断然良いに決まってる。南瓜はシチューに入れてもいいけど、スープなんかも作れそう・・・、とうもろこしやブロッコリーはないのかな?


「なまえ、今日の夕餉はお前が作れ。南蛮の料理をだ」

「ええええまじで」


というわけで、筆頭のために南蛮(正確には私の世界の)料理を作ることになりました。




姫かもしれない相手に少しドキドキしている小十郎は、後に更にドキドキする事になるのである。





12.野菜がありました。
(こいつが何処かの姫だったら・・・)
(今までの粗相は・・・)
(ああああどうすれば、胃が痛くなってきた・・・)


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南瓜(かぼちゃ)
馬鈴薯(じゃがいも)

カナメ




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テーマ「人外ファンタジー」
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