真夏、君の暑苦しい体温は
  酷く心地良いものだった。




その日は酷く疲れていた。
自分でも自覚していた。
脚の筋肉がガチガチで棒のよう、歩きにくい。
何故、疲れていたのか。
理由は簡単だった。
幕府に追われ鬼兵隊のメンバーと逃げている途中、大きな爆発で身体の軽い人間は吹き飛ばされた。
その中に俺も含まれたのだ。
久しぶりにこの小さな身体と軽い体重を恨んだ。
そしてようやく地面に着地すると、見知らぬ場所で店も人も動物でさえ見当たらない。


「……っ、」


――何なんだ。


しかし、ここで立ち尽くして飢え死にする訳にもいかない。
俺は歩いた。
なのに民家1つ見当たらない。
何時間歩いても、見当たらない。


「はあ、…はあ…」


元々体力と腕力に自信が無かった。
息切れ状態になりその場にへたり込んだ。
夜になりギラギラとした日差しが無いにしても熱帯夜。
汗は止まらない。
包帯も着流しも汗でぐちゃぐちゃ。
完全な熱中症。
クラクラする意識の中キラキラの銀髪を見つけ手を伸ばしたが届かないまま意識は無くなった。








―――…冷たい、気持ちいい


「ン、う…」


視界に入ったのは水。
ペットボトルに手を伸ばし取ろうとしたが止めた。


「…ぎんとき……」


カラカラな喉。
かすれた声で銀髪を呼ぶ。
そうすると畳が軋み、足音が近づいてくる。


「…銀、時」


何故、助けた?
まで声が続かなかった。
銀時は俺の背中に手を回し、ゆっくりと起きあがらせた。
水の入ったペットボトルのキャップを開け俺の唇に当ててきた。


「毒なんか入ってねえよ」


はは、とふざけた顔で笑う銀時を見て安心したのは秘密にし、そのまま素直に水をコクリと飲み込むとカラカラだった身体に冷たい水が巡り、頭痛が無くなった。
飲んだのを確認した銀時は優しく俺を寝かせてデコに冷えたタオルを乗せた。


「…銀時…」


「ん?、」


ありがとう、なんて素直に言ったら笑うだろうな。
そう思い、目を瞑るとふわりと温かい手が頭を撫でた。


――、気持ちいい


銀時はその後も俺が夢と現実を行き来した朦朧の中で頭を撫でては汗を拭いて新しいタオルでデコを冷やしてくれた。


またハッキリと意識が戻ると頭の痛みや吐き気は無かった。
身を包む着流しは銀時のものでサイズが合わないで袖から手が出ない。
包帯は綺麗に巻き直してあって汗だくだった身体も綺麗に拭かれてる。

そして、

目の前には銀時がいた。

ふんわりと俺を抱き締めて寝ている。
ふわふわの気持ちいい髪を撫でてると目を覚ました。


「ん、起きたのか…」


「…ありがと、な」


銀時は俺の感謝の言葉に目をぱちくりさせた。
自分の頬が染まっていくのが分かった。


「…良いってことよ」


ポンポンと頭を撫でられ、ぎゅうっと強く抱き締められた。
暑い、
でもどうしようもないくらい、心地よい。


「ぎんとき」


「…ん?」


「何で、助けた?」


「ん―、」


頭を面倒な表情でボリボリと掻くと頬に手が添えられ、え。


「ン、ううっ」


ぬるり、と咥内に銀時の舌が入り込みぐちゃぐちゃに掻き回す。
んあ、気持ちいい。
ふにゃふにゃになって、
ふああ、力抜ける。


「ん、はあ…っ、あ」


口を解放された瞬間ピピッと機械音がした。
音の方に顔を向けると電子時計が日付の変わった事を伝えていたらしい。


「誕生日おめでとう、高杉」


「え、あ…」


そうだった。
てことは。


「俺が誕生日じゃなかったら助けなかったって…事か、よ」


うわ、泣きたい。


「あ―、何でそうなる!!」


「!!?」


グイッと耳元に銀時の口が接近し小さな声で、「…好きだからだよ、馬鹿杉」と言われた。
カッと顔が熱くなるのを感じたが、真夏の暑さと銀時の熱い体温は別に、悪くなかったりする。


Fin.


ハッピーバースデー高杉!



 
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