※同級生銀高



「銀時」


最近妙に付きまとってくる存在がいる。
同じクラスにいる高杉晋助だ。
羨ましいくらいサラサラの紫がかった黒髪で細いラインの体。
それに男の癖に妙に色っぽい。
眼帯で隠されている顔は人形のように整っていた。
冷たく接しているのにひょこひょこ付いて来て可愛い、だなんて何度も思った事がある。
でも、それでも、俺もアイツも男。
それを受け入れる勇気は俺にはない。
ごめんな、高杉。


「何だよ」


「一緒に弁当」


にっぱりと微笑む高杉を抱き寄せたい衝動を押さえ込む。


「付いて来るなよ」


「やだ」


付いてきてくれて嬉しい、だなんて言わないし思わない。
あれでも、これを否定してる時点で、あれ。
背中に高杉が付いてくるのを感じる。
身長の差もあるのか歩くのが遅い高杉は必死で付いてくる。
それをまた可愛らしいと思い、それを否定し、また歩く速度を速めた。
屋上に到着すると日陰になっている場所へ行き隅に座るとこんな真夏だというのに高杉はぴっとりと俺の隣に座った。
少し高杉の息が乱れている。


「ぎんとき、弁当」


差し出された弁当はおそらく高杉のお手製。
どこぞの乙女かと内心突っ込むが美味そうな匂いに自然と弁当を受け取る。
高杉は週に二度ほど俺に弁当を渡してくる。
少し焦げた卵焼きを食べると高杉が緊張した眼差しで様子をうかがってくる。
高杉は料理が苦手だ。
手には絆創膏が付いてる。
ところどころに火傷の痕も見えた。
それでも必死に作ってくる。


「そんなに俺が好きなのか」


無意識に出た言葉に「うん、大好き」と高杉は微笑んだ。
ミンミンと蝉が煩い真夏。
高杉の首筋に汗が滴り落ちる。
少し湿った髪を撫でると一気にぶあっと高杉の顔が赤くなった。
そのまま首筋の汗を舐めとる。
「んン…」と小さく呻いたがそのまま舐め続けると「や、あ、」と喘ぎ始めた。


「俺、しょっぱい卵焼きが好きなんだよね」


「ふ、あ…?」


「お前のは甘すぎ」


「今度は、しょっぱくする」


顔を真っ赤にした高杉を放置したまま弁当を食べた。
何をしているんだ俺は。
高杉を突き放さないと、じゃないと俺は完全に高杉に溺れる。
高杉はコッペパンをもくもくと食べながら俺によって空っぽになった弁当を幸せそうに眺めていた。
だが午後の授業の予鈴がなる。
その音が聞こえた瞬間露骨に悲しそうな表情を見せた。


「あ、」


黙って立ち上がって屋上の扉を開けるとワタワタと弁当箱と食べかけのコッペパンを片付け、パタパタと俺に付いてきた。


「近寄るな」


そう、俺とお前は男。
お互いに想いは同じでも結ばない。
愛の結晶(子供)もできない。
つまり、"無意味"だ。

その言葉を言うと高杉は足を止めた。
弁当箱とコッペパンは乾いた音をたててホコリだらけの床に落ちた。
その音に振り返ると片目の硝子玉のような綺麗な高杉の瞳から一筋、涙がポロリと落ちた。


(……ごめん…)





 近付かないで
    好きになるから。





 
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