本能

※カニバリズム表現注意(性表現はありません。
坂本が黒いです、苦手な方は
読まないで下さい。



幕府を叩こうとした高杉は小さな作戦ミスで致命傷を負った。
テロリストなので普通の病院には行けない。
なので高杉は辰馬の手がまわっている病院へ運ばれたらしい。
ヅラや俺にその連絡は届き敵対しているとは言え、かつての友を心配した俺たちは辰馬が教えてくれた病院へ足を運んだ。
ヅラは顔色が悪い。
相当心配しているようだった。
人気の少なく江戸の隅っこ、天人が作った建物が少ない田舎にそのボロボロの病院はあった。

「おお、二人とも来たんか!」

「高杉は!?」


「やっと目を覚ましたきに」


早足に歩く辰馬を追いかけ、奥の病室へ案内される。
その間にあった病室やナースステーションには人はいなかった。
つまりここはもう使用されていない病院だとわかった。
病室に入るとそこの病室だけは最新の機材がそろっていた。
真っ白のベッドに横たわる高杉の身体は包帯に巻かれ、ところどころ血が滲んでいる。
点滴ともう一つの異様な程真っ赤な管は輸血をしているようだ。


「高杉…」


羨ましいくらいサラサラの髪に触れようとすると「触るな」と辰馬に止められた。
その時の辰馬の表情は殺気に溢れていた。
ああそうか。
お前、高杉が好きなのか。
呆然とする俺に辰馬は口端をニヤリと吊り上げると、別人の様に目を細めた。


「高杉は薬の時間じゃき、少し病室出てくれんか?」


だがその表情はぱっと消えていつもの様にふざけた笑顔に戻った。
ヅラと俺は辰馬と高杉を病室に残したまま廊下に出てボロボロの長椅子に腰をかけた。


「とにかく、無事なんだな…」


ヅラの安堵の溜息に自分のバクバクと煩かった心臓が静まったのが分かった。
そうだ、無事だったのだ、生きていたんだ。
その瞬間ガタン!と病室から大きな音が聞こえた。
ヅラは安心していたのか音に気付いていない。
何だろうと思いヅラを置いて病室を覗くと辰馬が寝そべる高杉に跨り自分の腕に傷を付けて流れた血を高杉の口に垂らしていた。
薬…?


「何じゃ金時、覗き見はいかんじゃろ」


「ぎ、銀時ぃ…」


助けて、と高杉は手を伸ばした。
その手はスルリと辰馬が掴み高杉の頬を殴った。
痛みと混乱でボロボロと涙を流す高杉を守ろうと俺は辰馬を突き飛ばした。
また先ほどの笑いを辰馬はすると備え付けの棚の上にあったナイフを俺に突き立てそれをギリギリでかわしたが頬に一筋血が流れた。


「は、あ…ぎんとき」


その血に反応するかの様に高杉は傷だらけの身体を起き上がらせて俺の腕を引っ張った。
その唐突過ぎる力に負けそのまま高杉のベッドに倒れこむとニッと高杉は微笑み先ほど辰馬につけられた傷を舐め、俺の血をおいしそうに飲み込んでいく。


「あぐ…ッ」


美味しそうに舐めていた高杉を辰馬は刺した。
ナイフで。え、


「ああああああああああああああああああああああ!!」


高杉の叫びでヅラが来た。
何が起きているか分からないヅラは困惑しつつも高杉を辰馬から引き剥がし傷の手当をし始めた。


「晋はわしのじゃき」


「銀時助けて…」


俺とヅラは困惑しつつ辰馬からまず高杉を逃がそうと目で合図すると俺は高すぎを抱え、ヅラは点滴と輸血袋を持った。
走って逃げている最中ずっと高杉は俺の胸に頭を摺り寄せていた。
それはもう本当に幸せそうだった。
ひとまずここに隠れよう、と手術室に入り壊れていた手術台を動かして扉を塞いだ。
窓側により辰馬が何時来ても逃げられるようにした。
ヅラは緊張の表情を浮かべていた。
高杉は楽しそうに俺の髪を弄くって遊んでいた。
足音が近付き、ヅラはゆっくりと刀を抜いた。
念のため、に。
その時だった。


「ぐぁぁぁああ!?」


高杉が俺の咽喉に噛み付いたのだ。
またも唐突な高杉の行動に声をつい発してしまう。


「晋はのう、おまんの血が飲みたいんじゃ」


「なん、で…」




「本能じゃき」

その言葉とともに世界は暗転しそのまま、

ドクン、と


「…高杉の血…飲みたい」


愛しさと狂気が混じり合って
俺の咽喉をチュバチュバと噛みつき出た血を飲む高杉の唇を貪るとナイフが頬をすり抜けて後ろの壁に突き刺さる。


「辰馬…」


「言ったじゃき、晋はわしのもんじゃ、と」


「銀時銀時」


愛の歪んだ3人を見ていた桂はただ呆然としていたという。

愛しい存在と血を混じり合わせ舐め合う快楽を知らない、桂だけはその中で狂うことがなかった。


「なあ、高杉…」


お前の血肉が食べたいくらい愛しいよ。



Fin.

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