「……虎?」
親父の大手動物園企業の跡継ぎ修行で動物園の飼育係としてバイトをしていた。
何時もは牛の『十四郎』を飼育していたのだが何故か今日からは虎を飼育することになった。
「…銀時?」
変な名前。
昔の奴みたい。
この動物園の一部の動物は特殊で夜中になると反擬人化したようになる。
名前からしてこの虎の『銀時』も反擬人化するのだろう。
実際、牛の『十四郎』もそうだった訳だし。
そしてもう1つの噂は『反擬人化した珍しい動物を裏で売買している』ということ。
一度見たことがある。
兎の耳を付けた可愛らしい少女がオークションにかけられているところを。
本人は涙を流して必死に暴れていたというのに無情にもその力は無力であっさりと3億で売られてしまった。
今彼女はどんな生活をおくっているのだろうか。
見せ物にされているのか。
他の奴に倍の値で売られたのか。
性的暴行を受けているのか。
はたまた幸せに暮らしているのか。
俺には分からなかった。たぶん、『十四郎』も『銀時』も売られてしまうのだろう。
「…人間は酷いなあ」
「え、あ…!」
ぼんやり考えている間に夜中になり、銀時は反擬人化していた。
やっぱり、お前も。
「俺らだって生き物なんだぜ?、売られて買われて物じゃあない」
「…ご、ごめんなさ…」
そうだ、その通りだ。
「謝って欲しいんじゃねえよ、味わえよ俺らの苦しみ」
「……ッ」
「神楽の泣き声が聞こえんだ毎晩毎晩、」
神楽、きっと兎の少女の事だろう。
「檻の中じゃ神楽の泣き声を聞くしか出来ねえ、ああ死んじまえ、人間なんか!!」
「ひあ!!」
首筋を噛まれヘタり込むとそのままズルズルと檻の中に引きずり込まれた。
反擬人化したとしても虎は虎。
力は人間よりはるかに強い。
作業服を爪で引き裂かれて今から何をされるのか一瞬で理解出来た。
そしてふと余計な事を思い出した。
虎が発情期である時は1日100回ほど色々な雌とセックスをするという事を。
「いやだ、許して…ッ」
恐怖で力が出ない。
虎の、銀時の視線は酷く冷酷で俺達人間も彼らにそんな視線で見てるのだと悟り、力を抜いた。
「どうした?、諦めたか?」
「…お前がそれで満足するなら…俺でいいなら罰を受ける」
「――…そうかい」
そう言って頬を舐めた虎の舌は酷く優しいものに感じた。
「んンっ、」
俺の頬を舐めた舌はゆっくりと下肢を舐め始めた。
「おいおい、虎(動物)なんかに舐められて感じてんのか?、淫乱な飼育係だな」
「ひあ、ふ…っ、」
胸の突起に噛みつかれ牙が当たって痛い、なのにゾクゾクとした。
体中を丹念に舐められ数回射精すると銀時のモノが入った瞬間優しく頭を撫でられ気を失った。
朝、精液まみれで俺は虎の胸に抱かれていた。
ふわふわの毛が気持ち良く擦りよると「ガウ」と銀時は鳴いた。
他の飼育係が来る前に身体の処理をしようと虎の檻を出た。
その自分の行動はやけに冷静だった。
シャワーを浴び、新しい作業服を着ていると廊下から話し声が聞こえた。
「銀時を売ろう」
それは残酷な言葉だった。
銀時が売られる。
自分を犯した銀時が。
気が付いたら、走ってた。
「ぎんとき、」
何も入ってない檻。
「ぎん、とき」
ああ、また俺は守れなかった。
兎の少女も、銀時も。
「銀時ぃ……っ、」
抱かれた存在。
たった1日で、銀時の苦しみとか悩みとかまだ全然分からないけど凄く、好きだった。
抱き締めたときのあの獣臭い香りと温もりと優しさに、
酷く涙が出た。
だって、彼らもまた、
人間の中の1人なのだから。
「銀時…」
何も入っていない檻の前で泣いた俺は非力な自分を恨んだ。
Fin.