「最近機嫌いいね、」


同じサークルの神威が俺と大学構内を歩きながら言った。


「ああ、好きな奴できた」


「へえ、どんな子?」


神威は信頼できる友人だから携帯電話を取り出して前撮った高杉を見せた。


「わ―凄いMなの彼はって、神楽のクラスメイトじゃない?」


「神楽、ああ、妹か、どこの学校だっけ」


「銀高校だよ」


ふうん、近所の学校じゃん。
今日は午後予定無いし迎えに言ってやるかな。




――――――――――――



また、だ。
奴から今日1日で10回も一方的なメールが届いている。
怖くなって新着のメールの内容を見ないで電源を落として通学鞄の奥に携帯を突っ込んだ。

でも後々この行為を後悔する。
メール内容を確認したらこんな事にならなかったろう。


「杉ぃ、大丈夫アルか、顔色悪いアル」


クラスメイトの神楽と沖田、土方が心配そうに俺の近くに来た。
言えない、こんな、
昨日会ったばかりの奴に脅迫されて強姦未遂をされて、告白された、だなんて。


「大丈夫だ」


昨日、深夜にコンビニに行かなきゃこんな事にならなかったろう。
久しぶりに真面目に勉強していたら小腹がすいて、だなんて。


「無理すんなよ」


「高杉はMだから耐えちゃうんでさぁ」


「るせぇ」


実際体調も悪かったから担任教師に言って早く帰った。
携帯電話の電源を一度も着けずに。
俺は家に着くとそのまま死んだように眠った。





次の日の朝。
早く寝たおかげで体調は良く目もすっきりしていた。
いい気分になりながら新聞を取りに外に出た。


「……?、」


玄関の前に置かれた真っ赤な薔薇の花束。
拾うとカードがあって書かれていた。


    愛しい高杉へ


「…!!ッ、」


アイツだ。
俺は花束をゴミ捨て場に放って家に逃げ込んだ。
家を知られた?
何故?
だって、

思考がグチャグチャになりガタガタと身体は震え、沖田や土方に連絡を試みた。
携帯電話の電源をいれると


「ひッッ」

新着メール54件。
着信履歴28件。

全て坂田からの。
一番古いメールはあの時学校で内容も読まずに放置したメールだった。
本文には「高杉の学校が分かったよ、迎えに行くね」と。
つまりあの時メールを確認したら自分の家をストーカーされずに済んだんだ。

何故あの新着メールを見なかったのかと後悔したが遅い。


「ひ、ぃっ!?」


電話が鳴った、携帯の。


(公衆電話から……か)


怖がり過ぎた、と思って電話にでた。


「はい」


『花束、気に入らなかった?』


「ひッ」


坂田、銀時。


『体調悪くて早退したんだって?心配したよ?』


「も…止めてくれ…ッ、」


『高杉?、体調良くなってないのか?』


「も、やめてぇぇぇぇぇぇ!!」


涙が恐怖で止まらないガクガク身体が震えて息が上手くすえない。


『分かった…』


「え、…っ」


『ごめんな、気付かないで、怖がらせて、ごめん』


プツンと電話は切れた。
…助かった、のか?
良かった!!、今すぐにでもメアドだけでも変えよう!!
もう大丈夫、大丈夫なんだ!!




























「病気の時は一人ぼっちは怖いよな、」














「え、」



ど、やって、家の中に。


「看病してやるよ、ああ鍵は植木鉢の下なんだな、ありがちだから泥棒入るぞ?」


にっこりと微笑んだ彼を見てぐらりと意識は飛んだ。



 

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