静寂の中、朦朧とした意識で
  君の姿を探した。





高杉の事を恋愛対象として見始めたのは何歳の頃からだろう。

目の前でコンビニエンスストアで購入した芋けんぴを噛む高杉の姿。


「いくらだった?しかも高杉が甘いもん何て珍しいし」


俺の言葉に高杉は欲しいのか、と一言言って俺に芋けんぴの袋を渡す。


「105円、何か唐突に食いたくなっただけだ」


「へぇ、」


あ、堅い。
でも懐かしい。

視線を上げると高杉の鎖骨が見えた。
否、見た。


「銀時、早く宿題しようぜ」


「じゃ、俺古典の宿題やるから高杉は数学宜しく」


「ん、」


苦手分野と得意分野をお互いに相手にやらせ、自分でやる。


「なぁ、」


「ん?」


「お前が好きって言ったらどーするよ」


「…さぁ、どーするだろうな」


お互いにこんな妙な関係が続いている。
高校に入学して学園祭の片付けの放課後。
学園祭というイベントのせいでテンションがおかしかったのか、俺は幼い頃から抑えてきた衝動を高杉にぶつけた。

俺は高杉にキスをしてしまったのだ。

高杉は目を見開いたが、何も無かったかのように片付けを再開した。

それからずっとこの微妙な状態。

お互いの母親が幼なじみだったから生まれた時から一緒だった。
今もそれは変わらない。


「あ、問12分かんねー」


「ふざけ、お前文系だろ」


「文系だからって何もかもが分かる訳じゃねぇよ」


そんなとき、高杉は小さく、ぁと呟いた。


「何」


「参考買い書忘れた」


高杉は立ち上がり鞄を持つ。


「俺も行くわ」


「いいよ1人で」


「んや、暇だし」


高杉は立ち上がる俺をチラリと見てドアを開けた。

騒がしい商店街を通り抜け工事をしている前を通り抜け、本屋につく。
高杉は本屋で3冊選ぶと金を出して外に出る。

そんな時、高杉の細腕を掴み振り向かせた。


「何だよ、」


「…あ、嫌別に」


ぱっと手を離す。
そんな時、
車の走る音も。
子供達の騒がしい声も。
話し声も。
店の呼び込みも。
全てが止まった気がした。





ガシャン!!




世界が真っ赤になる。
目の前には高杉。
そう、真っ赤な高杉。

工事していた。
鉄橋が落ちてきた。
高杉の腹に鉄橋がぶっささっていた。


「た、たか、たかす…」


呼吸ができない。


「ぎ、…とき…」


「高杉!!」


「…あり、がとう」


ゆっくりと高杉の目が閉じて、その後。

キャァァァ!!、と。
叫び声が響いた。



Fin.



 
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