最初から好きだった。
サラサラの黒髪、柔らかそうな肌。
赤くぷっくりと美味しそうに膨らんだ唇が食べたくなるくらいに。
神威の場合。
2年になって初めて同じクラスになった高杉晋助が好きになってから毎日毎日晋助の姿を目で追っていた。
華奢な身体だな、とかラインが妙に細いな、とか色々思いながら。
ある時だった。
晋助が不良に絡まれ路地に連れていかれた。
それを隠れて傍観した。
何故手を出さないかと言うと、残念ながら可愛い恋愛には興味がなく、傷付いた晋助が最終的に自分に涙でぐちゃぐちゃな顔ですがりついて欲しいからだ。
ああ、どんどんボロボロになってきた。
これは流石に不味い事になったな、
そんなときに担任教師が面倒な表情で歩いているのを見かけて声をかけた。
「先生」
「よお、偶然だな」
「さっき路地で晋助が不良に絡まれてるの見てさ、助けてあげてよ」
おお、流石先生、路地に走り出したよ。
さてと俺は傍観傍観。
晋助ったらあんな弱い不良共にやられちゃって、
―…ああ、早く俺のこの手で壊してあげたいな。
でも流石に俺の晋助を先生が抱きかかえて自分の家に連れていったときは殺しちゃいそうになった。
数時間ファミレスにいると晋助が歩いていた。
やっと先生の家から出てきたの?
「晋助、」
「…神威」
「どうしたの?その傷」
「…神威、俺、」
―…好きなひとができた。
晋助には友達と言えるものが少ない。
同じクラスだと不良仲間の俺だけだろう。
だから俺に言ってくれたんだね。
坂田銀八が好きになった、と。
「ぁ、ぐぇ!?」
「坂田先生には恋人がいるから止めときなよ」
「……え?」
晋助の首を締め上げて嘘を言うと哀しげな表情になり、俺を興奮させる。
まあ、晋助はどうせ先生に聞く勇気もないだろうし。
「苦しむから今の内に止めとくべきだよ」
「か、神威…」
「信じられない?…俺ら友達だろ?」
今は、ね。
へなへなと座り込む晋助を先ほどの先生の様に抱き抱えた。
―…誰にも渡すものか、