流石に死ぬ、と思った。
いくら喧嘩に強くても人数にかなうほど自分はビックリ人間じゃないんだと自覚した瞬間だった。
路地に連れられると5人ほどガタいの良い奴らが俺をニヤニヤとした表情で見ていて、殴りかかってきたから反撃した。
鼻血が出たくらいで騒ぐ男は叫んだ。
「お前"等"出てこい!!」と。
その声とともに更に20人ほど、どこに隠れていたのだろうと考えるくらい出てきた。
1対25人。最初は体力もあったし平気だと思っていた。
でもやっぱり無理だった。
所詮俺はただの男子高校生なのだから当然と言えば当然で。
アニメやドラマみたいな展開はなかったのだ。

膝を地面に付けた俺は諦めて目を瞑った。
ついに高杉を倒したと嬉しそうな声が聞こえる。
鉄パイプを大男が俺の顔面に狙いを定めて振り下ろした。

…が、痛みはこない。

代わりに顎を掴まれていた。


「コイツ、結構綺麗な面してんじゃねーか」


は?、何?


「セックスって男同士でも確か出来るんだよな?」
は!?


身体が動かない。
痛い、痛い痛い、怖い、
汚らしい唇が俺に近付く。
逃げようとしたら他の奴らに拘束された。
制服の下に着ていたTシャツは切り裂かれた。


「ぐあ!?」


その時、現れた救世主は担任教師の坂田銀八だった。
全ての不良をなぎ倒し、腰が立たない俺を抱えて家に連れ帰ってくれた。



 高杉晋助の場合。


「お前大丈夫か?」


甘ったるいココアを渡され素直に飲み干すと優しく頭を撫でられた。
触られたところが熱い。
傷の手当までされて無償に泣きたくなった。
それを見抜くかのように「苦しかったろ」と言われ、涙がボロボロ零れる。


「よしよし、怖かったな」


まだ高校生だもんな、と抱き締められ背中をポンと叩かれると急にバクバクと心臓が五月蠅くなった。


…俺、もしかして、


「銀八、またここに来てもいい?」


「何時でもおいで、」


好きになってしまったのだろうか…。


 
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