温かい眼差し
  輪廻の果てに、



「高杉の事好きなんだけど」


照れくさそうに頭を掻いた先生は真夏の7月に告白してきた。
最近熱を帯びた視線を感じていたのは知っていた。
今だって驚いた俺の表情に欲情した眼差しを俺と絡める。
つい生唾を飲んだ。
銀時、銀時、銀時…っ
前世からの銀時への想いが募っていく。


「うん…俺も好き」


その時の銀時の表情と言ったら、
本当は毎日見かける度に銀時を見つめていた。
前世の記憶が無ければと何度思った事か、
目が合えばまるで餓鬼をあやすかの様に微笑まれた。
あの笑顔に何度泣きそうになった事か。
付き合い始めてから「銀時」と名前を呼んで甘えると「銀八なんだけどなぁ」と笑われた。
うん、うん。
分かってはいるんだ。
なのに、あの日銀時を置いて死んでしまったのが後悔で。
―…本当、今更。


告白された日を境に毎日一緒に帰るようになった。
昔と変わらない目にもしかして銀時も前世の記憶を覚えているんじゃないのか、と期待する馬鹿な俺がいる。
銀時が残業する日は何かと理由をつけて待っていた。
冬になってもそれは変わらなかった。
長いマフラーをぐるぐるに巻いて門の前で銀時を待った。
先週もこんな事をして合い鍵を渡されたが結局それは使わないまま制服のポケットに入れたままだ。
銀時が出てきて話しに行くと


「風邪ひかないでよ?」


と優しく微笑まれた。
今日も銀時の家で鍋が食べたい。
前世の記憶がないからと言って、俺が銀時を嫌う何て有り得ないしずっと好きでいられる自信がある。
だから平気だ。

スーパーで白菜と安売りの蜜柑をカゴに入れてく銀時の背中を追う。
今も昔も変わらない大きな温かな背中。
ジンと目尻が熱くなるのを感じたが我慢した。


「高杉?」


同じ顔、表情、声、目、体格、性格、髪、唇、何もかもが前世と同じで俺を狂わせる。
違うのは、俺だけが未練がましく記憶を持って生まれた事。


「ッ!」


頬に手を当てられる。


「銀、と、」


またか、と頭を撫でられる。
やはり思い出せない記憶。
俺は苦しんで苦しんでそれでも銀時に再び出会えた事に感謝した。


買い物袋をぶら下げて、未だ使う予定の無い合い鍵をポケットにいれたまま、俺は銀八の背中を追うばかり。


―…過去に捕らわれたまま。


Fin.




 
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