"恋人"その単語にここにいた奴らが固まった。
ただ神楽の兄貴だけはアイツの後ろでニヤニヤして今の状況を楽しんでるように見えたけど。


「高杉を脅迫してんのは分かってるんでぃ、何が恋人でさあ」


沖田が勇気を振り絞ってアイツの前に立つ。
幸いなことにここは学校だ。
アイツが暴力やら何やらしたら直ぐに教師に捕まる。
それを理解して沖田は前に出てくれた。


「お前高杉の何?、脅迫?は?何言ってんのか分かんねーな、高杉は俺を愛してるに決まってんだよ、」


「相当狂ってんな、あんた」


土方も参戦する。


「狂ってる?、はは」















「狂わない愛は本当の愛じゃない」




腰が抜けた。
それを言ったアイツの顔は狂気に満ち溢れ、今にも沖田と土方を殺してしまいそうだった。


「大体お前ら高杉と俺の何を知っているのかな?、俺は高杉の全てを知ってる、何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も何時も高杉の事を考えてる、それを狂ってるって?」


「ぐあっ!!」


「―…好きな人を想わない方がおかしくない?」


沖田の首を締め上げた。
沖田の抵抗力、と言うより高校生と大学生じゃ力の差は漠然としていた。
神楽がいや、と涙ぐんだ。
土方が沖田に近付いて助けようとする。
駄目だ、土方もかなわない。


「ぎ、銀時、沖田離せ、よ」


「高杉…」


その瞬間沖田を離して俺に近寄ってきた。
今の状況で助けられるのはこれしかないんだから。


「銀時、と、2人きりになりたい」


「―…分かってるよ」


ふわりと微笑んだコイツは本当に先程と同一人物なのかと思うくらいだった。
大丈夫、2人きりと言っても学内だ。


「学園祭が終わったら俺の家に行こうね」


「「「「!?」」」」


「え、あ…」


「ん?、どうした高杉」


「い、いや…」


高杉の表情を見て予想外の展開だったらしい。
せっかく沖田を助けようと言ってくれたのに。
俺が今助け舟の言葉を言ったら坂田銀時は必ずしも俺に矛先を向けてくるだろう。
そんな事したら更に高杉に迷惑のかかる可能性がある。
神楽だって無意識に兄貴の背中に隠れてしまっている。
沖田は酸素を必死に取り込んでいるし今助けられるのは俺しかいない。
分かってる。
なのに。


「畜生、」


土方が涙ぐんでいる。
それを確認したと同情にアイツに手を引かれ立たされる。
ニコリと微笑むコイツはきっと俺をもう解放しない。
でも、これ以上巻き込む事はできない。
だから、


「…――銀時、行こう、」


「うん、」


もう外には出れない。




 
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