銀時、いや、アイツが家からやっと出て行ってくれた。
看病などと食わされた飯を吐いた、全て。いや美味しかったのだがもったいないのは理解していたが、それでもアイツが作った料理だと思うとやっぱり吐き気がした。


「杉ぃ、…」


顔色の悪い俺を心配したのか神楽が珍しく茶化さないで俺の隣の席から俺に話しかけた。
今もアイツからの一方的なメールが止まらない。携帯のバイブが数分置きに鳴りっぱなしだ。
雰囲気から察した土方が珍しくマヨネーズではなく缶コーヒーを俺にくれた。


「最近やつれてるな、大丈夫なのか?」


「………」


相談するか否か迷っていると場の空気を変えようと神楽が話題を変えた。


「そろそろ私の馬鹿兄貴の大学の学園祭があるアル、杉、一緒にいかないアルか?馬鹿兄貴の友達が銀髪でめちゃくちゃ面白いアル、あと私たちの学園祭に来てくれるらしいアルよ」


「!」


銀髪、その単語に恐怖を感じるのは俺くらいだろう。
土方、そしていつから居たのか沖田も銀髪とか珍しいなくらいに聞いていた。


「高杉、さっきより顔色悪いでさあ、」


「……高杉本当になんかあったんじゃないのか?」


「体調不良アルか?」


神楽の兄がいる大学に行ったらアイツに会って、アイツはまた意味の分からない妄想をするに違いない。それに、三日後の学園祭に来られたら俺、は。


「…高杉?」


話そう、この3人にならば頼ったとしても支えてくれる筈だ。


「…話す、から聞いてくれるか?」


3人は俺の真剣な声に少し真面目な顔になってゆっくり頷いた。
それを確認した俺は今までのことを話した。
3人は信じられないと目を見開いたが直ぐに頭を整理したようで「話してくれてありがとう」と言ってくれた。
温かく優しい声に心は軽くなった。


「しかし、最低な野郎でぃ」


「つか、犯罪じゃねえのか?」


「私の杉を悲しませる奴はみんな敵ヨ!!」


その言葉に、何故だか今まで優しい表情を見せたアイツの顔を思い出してちょっとだけ罪悪感があった。本当に何故、


「とにかく、登下校は高杉といるべきじゃないか?」


「メールは着信拒否にしたら何されるか分からないから無視に限るでさあ」


「そうネ、杉、安心するよろし!」


そして登下校は毎日3人の誰かが必ず俺と一緒にしてくれるようになった。




「悪い子だね、高杉」


お前は俺の物なのに。
茶髪の少年の次は黒髪の優男。
他の男を家に連れ込んでさ…
あああああ、悪い子だ。
ずっと見てるんだよ、お前は俺の恋人なんだから。
だからお前も俺をずっと見てなくては可笑しいだろ?




「…ふう、」


なんだかんだで土方や沖田や神楽のお陰でかなり安心している。
明日の学園祭も付きっきりでいてくれるそうだし。
だけど気掛かりなのは沖田と初めて一緒に帰った日からアイツはメールや電話を全くしてこない事だった。



――――――――


学園祭当日。



「いらっしゃいませ―」


俺らのクラスはお化け屋敷をしていた。
受付係りだともしもの事でアイツが来たとしたら逃げられないので俺は裏方に回してもらった。
周りには他の生徒もお化け役で沢山いるわけだし大丈夫だろう。勿論3人もわざわざ裏方にきてくれた。


「兄貴にはいきなり拒否すると変に思われるから断れなかったヨ、でも学校に来たらメールいれてくれ言うたネ」


「そ、そうか、」


土方が「昼飯買ってくるよ」と立ち上がった瞬間、神楽の携帯が鳴った。
4人が唾液を同時に飲み込んだ。


「…着いたらしいアル」


沖田が俺に毛布をかける。
神楽さえ兄の前に姿を現せばさっさと帰るだろう。


「大丈夫でさあ、高杉」


「ん、…」


神楽が頭から白のシーツを被った。白のシーツには恐ろしい顔が描かれている。
裏方からお化け屋敷の通路を仕切る黒い布をくぐると神楽は「行ってくるネ!!」と言った。
この仕切る黒い布をめくられたら俺は見つかる。
恐怖で先ほど沖田にかけられた毛布を頭から株って強く握り締めた。
身体を小さく縮こまってると土方と沖田が俺の前に立つ。
壁代わりになってくれるのだろう。


「あ、神楽」


「こっちアル〜!」


「へえ、これが妹?可愛いね」


神楽の兄であろう声とアイツの声。
バクリバクリと心臓が鳴る。
数分くらいペチャクチャと喋り、「じゃあ、」と立ち去る雰囲気に溜め息を漏らした、



瞬間だった。



鳴り響くバイブ音。
俺の胸ポケットから。
沖田と土方が振り返った。


「あ、ちょ!、中で携帯はだ、駄目アルよ!!」


焦ったような神楽の声。
携帯を開いたら光が漏れる。
しかも電話のようで何時までもバイブは鳴り響く。


「う、裏方はいっちゃ、駄…ッ!!」


「見つけたよ、高杉」


「ひ、ぃ!!」


神楽がアイツの服の袖を掴んだ瞬間に黒い布はめくられて、


「せ、生徒以外裏方は立ち入り禁止でさあ」


「すみませんが閉めてもらえませんか?」


沖田と土方の言葉は完璧だった。





「仕方ないじゃん、会いに来ないからさ、せっかく学園祭頑張ってる姿見に来たのに
ああ、大丈夫俺高杉の親じゃないけど一応関係者かな?
ほら高杉おいで、恥ずかしがるなって、だって俺ら







         恋人なんだから」




学園祭編?続きます。
 
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