勘違いボーイ



「……ん、」


残暑でまだ寝起きはジットリとした汗が肌の上に乗っていた。
銀時はまだちゃんと覚醒していない感覚のまま、何時もの着流しに手を伸ばした。
しかし、掴んだ着流しは何時もの着流しでは無かった。


「………?、女物」


そう、女物の着流し。
派手な、あの。


「高杉、の」


ふ、と隣を見ると自分と添い寝している高杉の姿。
そして一気に銀時の意識は覚醒した。
何故、高杉が。
隣、に?
バクリバクリと心臓が煩い。
落ち着け、と自分に言い聞かせるように胸に手を置いた。
だが、直に触れた肌。
自分は裸だったのだ。
そして高杉の着流しを手に持っている、つまり…、


「う、ああああああ!?」


「んあ?」


(ま、まさか、高杉を、いや、だけどこの状況じゃ、)


銀時は昨日の晩のことを思い出そうと頭を捻るが全く思い出せない。
いや、実際は長谷川と酒を浴びるように飲み、それを吐いて路地にひっくり返って眠りそうな時、華奢な身体付きの人間が自分を見下ろしていたところまでは覚えていた。


(まさか、それが高杉だったとは)


驚きのあまり銀時は固まってしまった。
一方高杉の方は銀時の叫び声で目を覚ましたものの、完全に覚醒していないのかぼーっとしていた。
朦朧とした意識の中、銀時が持っていた自分の着流しを取り肩に羽織ってフラフラと浴室に向かってしまった。


(え、ちょ、起きて直ぐ風呂!?ま、さか、いやいや!!朝シャンだよね!?そうだよねぇぇ!!)


しかし高杉とひとつの布団で裸で添い寝していたという事実が銀時の中で高杉と酔った勢いでセックスしてしまったのかという思考になってしまう。
しかも高杉は酔った自分を助けてくれたというのに。


(…―ああ、やっぱり臭うな)


シャワーを浴びている高杉は、すんっと自分の身体の匂いを嗅いで思った。
高杉は気分転換のため散歩をしていた。
そして見覚えのある銀髪を途中で拾い、わざわざ万事屋まで銀時を運んだのだ。
布団を敷いてやり、銀時を寝かした。
が、いきなり立ち上がった銀時は高杉に下呂をふっかけたのだ。
お陰で銀時と高杉の着流しは汚れた。
苛々しつつも着流しを脱ぎ脱がし洗濯機に放り込んで枕元に置いたのだが乾燥機がないため乾かす事が出来なかった。
なので裸で眠る選択になった。
押し入れを開けるとほこり臭い布団しかない。
今銀時が寝ている布団はまだマシな方だったため添い寝をした。


(恩を仇で返しやがって)


高杉はぎゃあぎゃあ騒いで煩い銀時を睨むと何故か銀時は頬を赤くした。
そしてそれを見た高杉もつられて赤くなった。


(こ、この高杉の反応)


銀時はゴクリと生唾を飲んだ。
高杉とセックスをしてしまったと勘違いしている銀時は風呂上がりの肌と赤く染まった高杉の表情に可愛い、と感じた。


(高杉も拒否しなかったぽいし、もしかしてもしかして)


銀時は小学生の初恋のようにドキドキとしていた。
紅桜の一件で睨み合った2人には感じられないほどピュアな空気が流れていた。


「そう言えば、」


沈黙に耐えきれなかった高杉が口を開く。銀時はその動いた赤くぷっくりとした唇を見て、またゴクリと生唾を飲んだ。


「な、なに?」


「今日、偶然だけど俺と銀時の誕生日真ん中の日だな」


「!!?」


予想外の可愛い言葉に銀時は鼻をおさえた。


「昔よく、真ん中ってだけで騒いでたよなぁ」


クスクスと笑う高杉が可愛く見えてしょうがない銀時は高杉の手を握った。


「た、高杉」


「?」


「俺、酔った勢いで高杉とシちゃったけど、今気付いた!高杉、好き、大好き!」


「―…は?」


突然過ぎる愛の告白に高杉は銀時を凝視した。
しかし真剣な銀時の表情に冗談ではないと理解する。
ぎゅうぎゅうと痛いほど握った手は震え、高杉の言葉を待っていた。


「…あの、銀時、」


「やっぱり、男同士だから無理か?」


「………、」


銀時は酔った勢い、というのをとても後悔している様子だった。
実際下呂をぶっかけただけなのだが。


(まあ、いいか、色々間違えてるこんな馬鹿だけど、俺はもっと昔から、)


高杉の答えに銀時は微笑んだ。


銀高の日!!



 
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