「た、ただいまー……」

D機関内に衝撃が走った。
任務から帰還した甘利くんの腕には、青い瞳の少女が抱かれていた。

「へえ、エマちゃんっていうのか」
「可愛いですね」

甘利くんが連れてきたエマという女の子。私達はそれぞれが独立した任務に就くとき、お互いの詳細は聞かされない。今回の甘利くんの任務も、一体どこで何をしてきたのかわからないが──。

「結城中佐の所にはもう連れていったのか?」
「勿論ここにくる前に先に報告したさ。正座したよ」

いやあ参ったと言いながらも笑顔の甘利くん。正座……お説教でもされたのか。想像してみたら、あれ?意外と違和感ないな。

「それでどうするんです?これから」
「暫くは面倒をみようと思う。一応結城中佐の許可も貰ったしね」

如何にも小さな子どもの相手が苦手そうな三好くんは、甘利くんの言葉にやれやれとでもいうように軽く首を振ってみせた。それに少し苦笑を漏らしつつも、甘利くんはよろしく頼むよ、と軽く頭を下げた。

「エマ、おいで」

向こうで波多野くんや実井くんと笑い合っていたエマは、両手を広げた甘利くんに気付くと走ってきて飛びついた。二人に何があったのかその経緯は全くわからないけれど、その姿はまるで本当の父娘のように見えた。

「甘いものは好きか」

突然ぬっと現れたのは割烹着姿の福本くんで、その手に持つお盆にはたくさんのお菓子がのっている。

「お菓子で釣るなよ」
「そんなつもりはないんだが……」
「エマ、食べるかい?」
「いいの?」

じゃあ、これ!とエマがつかんだのはキャラメルだった。包み紙を器用にひろげて取り出したそれを、口のなかでコロコロと転がしているのが何とも愛らしい。

「甘利がさらいたくなるのもわかるな」
「さらうとは……もっと違う言い方がないか」

エマを連れて帰ってきてから機関員達のからかいにたじたじになっている甘利くんは、これまではどこか皆の兄貴分的な存在だった。それが今回の件で立ち位置が変わってしまうんじゃないかと、我ながら頓珍漢な心配をするのだった。


 
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