オレが思うにきっとそれは、彼が信じる神様とかそういう類の。
「真ちゃんおっはよー!」
「…お早う。朝からご機嫌だな」
「朝イチで真ちゃんの顔が見られるからですね!」
毎朝の日課を果たしに来たオレはニコッと一発笑ってやる。オレとは裏腹に不機嫌真っ盛りな顔で扉を開けた真ちゃんは、大袈裟にため息をついてからオレが引っ張るリアカーに当然のように乗り込んだ。いひひ。
「気持ちの悪い笑い方をするな」
「アレ、聞こえてた? 気にすんなよ」
「…早く行け」
「イエス、ユアハイネス」
ふざけるなとばかりにがつんとリヤカーを蹴っ飛ばす。ほんとに今日は機嫌が悪いらしい。
真ちゃんの機嫌が悪い理由なんてひとつしか思い浮かばないのだけれど、手に持ったお香の箱を憎々しげに睨んでいるのを見るとちょっと今日はからかう気にはなれなかった。そんなに悪かったんかな、占い。気にして不機嫌になるその横顔はすごくきれいでかわいいと思うけど。
「やー、いい天気ですねえ」
「…曇りだが。目は大丈夫か、高尾」
「訂正。いい景色だ」
「………」
ちらりと後ろを見れば、不可解の三文字がありありと浮かぶ顔。スピードを誤って真ちゃんに怪我をさせないようにしながら、今度はこっそりと笑う。
かわいい真ちゃんがいつでも見られるオレは、毎日がラッキーディ。
だから結局のところ
(始まりの責任なんてどーでもいいよね)
「恋する日々」
好きになったのは果たして誰の責任か
配布元:White lie