ことことと揺れる鍋のふたをそうっと開ける。中には野菜と鶏肉が少し、コンソメのいい匂いがただよってくる。
「もう火止めていい?」
「まだですよ」
黄色いエプロンの後ろ姿がそういって、オレは持ち上げていたふたを渋々戻した。くすりと聞こえた笑みを後ろから抱きしめてのぞきこむと、「なんですか」と楽しそうな声がそういって。
「骸がオレを見てくれないー」
「料理中ですから」
「オレも構って」
髪があがってるせいで見える首筋にキスをひとつ。苦笑と一緒につかれたため息、止められた火に感じたのは、どうしようもない幸せだった。