「時夜」
自らが守る柱の上、ぼうっと月を眺めていた。今日の月は2つ。昨日は4つ。明日はきっと3つになるだろう。
「…空夜」
「なにを見てるの」
「月」
ずっとずっと向こうにある柱から来た空夜は、時折私の柱の様子を見にやって来る。空夜自身は「君の様子を見に来てるんだよ」と苦笑するけれど、きっとそれは嘘だ。生まれ落ちてから柱に乗れるようになるまで、私はずっと空夜の世話になってばかりいた。私が落ちこぼれだから。
「いつまで待つの」
空夜は私を馬鹿にするでもなくただ目を細めて、どこまでも静かにそう聞いた。膝を抱えた私には空夜の顔を見ることはできないけれど、空夜はいつもそうだから。ただどうしようもなく不安だった。さみしかった。
「…ずっと待つよ」
私はここで、君が来るのをずっとずっと。