例えばこうやって一緒に歩いてみたりだとか、君の背中を見たりだとか。
「暑くなりましたね」
「そっスねー」
暑いというわりには上までキチッと止めてあるボタンを見て、ほんとは暑くないのかそれともただ単に几帳面なだけか。なんて考えたり。
空よりも明るくて雲よりも綺麗な髪が風になびく。いつもは本を読んだりしている両手が、今は手持ちぶさたに揺られていた。気になる。気になっちゃう、のは、やっぱりしょうがなくて。
「ね、黒子っち」
「なんですか」
「手、つないでもい?」
ポケットにつっこんだままだった右手を出す。きょとん、俺が何か言うときに必ずする表情を少し。
「…黄瀬くんはほんとに甘えん坊ですね」
「黒子っちにしか言わないっスよ?」
「そういうわけではないんですが、」
はいどうぞ、出された左手をしっかりと握る。華奢な外見とはうってかわって、黒子っちの手もやっぱり少しごつごつしていてかたかった。スポーツマンの手。それにちょっと、嬉しくなって。
「へへー」
「…締まりのない顔してますよ」
「だって嬉しいんスもん」
「君の見た目でもん、とか言わないで下さい」
ぷい、とあっちを向いちゃう黒子っち。でも黒子っちは、俺がもん、とかいうのに、気持ち悪いだとかうっとうしいだとか言うことは絶対ない。そのことに俺って愛されてるなあ、なんて思ってしまうのは、俺がそれだけ黒子っちのことが好きだからだ。大好き、だからだ。
「黒子っち」
「はい」
「くーろこっち」
「…用がないなら、」
ちょこっとだけ嫌そうにひそめられた眉に構わずに、いつもなら許可なく触れることはしないそこに、ちゅう、と下手くそなキスをした。
「黒子っち、だいすき」
プラトニックスカイ
(そばにいてくれて)
(いさせてくれて、ありがとう。)