「あ、雨」

「ああ?」


ぼんやりと窓から外を眺めていた黄瀬が、突然ほら、と爪の先でガラスこつこつと叩いた。


「やっぱり降って来ちゃったっスね」

「あー。早めに帰ってきて正解だったな」

「火神っちがしつこいから、オレもうバテバテ」

「お前も途中からノリノリだっただろーが。責任転嫁すんな」

「あは、火神っちそんな難しい言葉知ってんスね」


楽しそうに足をバタつかせた金髪をかるくこづく。シャワーを浴びてすぐの雫がしたたるそれを手に持ったタオルでがしがしとふくと、自立心のない頭が手の動くままにぐらぐらと揺れた。「あ〜〜〜」変な声。バカか。


「オレ、火神っちとバスケすんのすき」

「そりゃどうも」

「火神っちもすき」

「あっそ」

「つめたーい」

「るせえ」


ぼさぼさになった金糸を手櫛で適当に整える。こんなバカでもモデルはモデルなんだから、外見には気を遣った方がいいのだろう。家のなかでまで気を遣う理由は分からないけど。面倒なやつ。


「火神っち、寄っかかってもい?」

「勝手にしろよ」

「うん」


前に重心を置いていた体をそのまま後ろに傾けて、ぽて、とちいさい頭が寄りかかってきた。くるまっている毛布ごと抱え込む。


「…火神っちってなんか安心する」

「ああ?」

「おっきいからかなー。なんでだろ。なんで?」

「…よくわかんねえけど」

「オレにもわかんない」


雨が綺麗だね、と指さした先、今日は星は見えないだろうなと黄瀬が呟いた。



金色プロミネンス
(それはきっと、いつかオレをやきつくす)
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